「東京は年収が高いけれど、生活費に消えてしまう」。よく聞く話です。実際に数字で確かめると、まったく逆の結果が出ます。
今回は2つの統計を重ねました。ひとつは総務省の消費者物価地域差指数(2025年、全国平均=100)。もうひとつは厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査から算出した都道府県別の平均年収です。年収のほうも全国平均を100として指数に直し、物価指数から年収指数を引いた差で並べました。
差がプラスに大きいほど、物価は全国並みなのに年収だけが低い、つまり収入と生活費が釣り合っていない県ということになります。
※年収は「きまって支給する現金給与額(2025年6月分)×12+年間賞与その他特別給与額(2024年の1年間)」で推計。企業規模10人以上の事業所で働く一般労働者の産業計・男女計で、事業所の所在地別に集計されたものです。全国平均は545.6万円。物価は小売物価統計調査(構造編)の総合指数です。
- 公式情報:総務省統計局|小売物価統計調査
| 順位 | 都道府県 | 物価指数と年収指数の差(ポイント) | 消費者物価地域差指数(全国=100) | 平均年収の指数(全国=100) | 平均年収 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1位 | 沖縄県 | +25.0 | 100.4 | 75.4 | 411.4万円 |
| 2位 | 青森県 | +24.4 | 97.9 | 73.5 | 400.8万円 |
| 3位 | 宮崎県 | +22.6 | 98.0 | 75.4 | 411.6万円 |
| 4位 | 山形県 | +22.4 | 100.1 | 77.7 | 423.8万円 |
| 5位 | 岩手県 | +21.8 | 100.0 | 78.2 | 426.5万円 |
| 6位 | 高知県 | +20.9 | 99.9 | 79.0 | 431.0万円 |
| 7位 | 秋田県 | +20.5 | 98.6 | 78.1 | 426.4万円 |
| 8位 | 鳥取県 | +20.4 | 99.1 | 78.7 | 429.6万円 |
| 9位 | 島根県 | +18.0 | 99.8 | 81.8 | 446.5万円 |
| 10位 | 長崎県 | +17.7 | 99.6 | 81.9 | 446.8万円 |
11位以下は、北海道+16.9、佐賀県+16.7、福島県+15.6、熊本県+15.3、愛媛県+14.7と続きます。
この表がはっきり示しているのは、物価の地域差が、思われているほど大きくないということです。最も高い東京都の104.2と、最も低い鹿児島県の96.4の差は8ポイント。一方で年収の指数は、東京都の124.3から青森県の73.5まで51ポイント開いています。生活費の差より、収入の差のほうが6倍以上大きいわけです。
1位 沖縄県:+25.0ポイント
物価指数100.4に対して年収指数75.4。差は25.0ポイントで、47都道府県で最も大きくなりました。
沖縄県の物価指数は全国平均を上回っています。物価指数が全国平均を上回る県は、47都道府県で9つしかありません(北海道・宮城・山形・埼玉・千葉・東京・神奈川・京都・沖縄)。そのうち年収も全国平均を上回るのは、東京都と神奈川県の2つだけです。
2位 青森県:+24.4ポイント
年収400.8万円は47都道府県で最も低く、指数にすると73.5。全国平均の4分の3に届きません。
一方の物価指数は97.9で、全国平均より2.1ポイント低いだけ。年収は26.5%低いのに、物価は2.1%しか安くないという関係になっています。
3位 宮崎県:+22.6ポイント
年収411.6万円(指数75.4)、物価指数98.0。差は22.6ポイントです。
この県には上位10のなかで唯一の特徴があります。住居の指数が101.3と全国平均を上回っていること。ほかの9県はいずれも住居が全国平均を下回り、秋田県87.5、鳥取県85.8と2割近く安い県もあります。
4位 山形県:+22.4ポイント
物価指数100.1で、全国平均をわずかに上回ります。年収は423.8万円(指数77.7)。
住居の指数は93.5。住居以外のところで全国平均並みの物価になっている県です。
5位 岩手県:+21.8ポイント
物価指数はちょうど100.0。全国平均と完全に一致する唯一の県です。年収は426.5万円(指数78.2)。
生活費が全国平均そのもので、収入だけが2割以上低い。この記事の軸がいちばん素直に表れている県といえます。
6位 高知県:+20.9ポイント
物価指数99.9、年収431.0万円(指数79.0)。
高知県は年間賞与が62万9,800円と47都道府県で沖縄県・青森県に次いで低く、月々の給与(30万6,700円)の水準に対しても2.05か月分にとどまります。年収の低さは賞与の薄さから来ています。
7位 秋田県:+20.5ポイント
物価指数98.6、年収426.4万円(指数78.1)。
住居の指数は87.5で上位10のなかで2番目に低い数字です。それでも総合が98.6にとどまるのは、住居以外の費目が全国平均に近いためです。
8位 鳥取県:+20.4ポイント
物価指数99.1、年収429.6万円(指数78.7)。7位の秋田県とは0.1ポイント差で、実質的には同着です。
住居の指数85.8は上位10で最も低く、全国平均より14.2%安い。それでも総合では全国平均に1ポイントも届かないところまで戻ります。
9位 島根県:+18.0ポイント
物価指数99.8、年収446.5万円(指数81.8)。上位10のなかでは、10位の長崎県と並んで年収が高いほうです。
住居の指数は89.0。ここでも住居の安さが総合に反映されきっていません。
10位 長崎県:+17.7ポイント
物価指数99.6、年収446.8万円(指数81.9)。9位の島根県とは0.3ポイント差です。
11位の北海道(+16.9)とも0.8ポイントしか離れていません。9位から11位までは横並びと見るのが正確です。
まとめ
下位、つまり年収と生活費が最も釣り合っている県を見ておきます。47位 東京都-20.1、46位 愛知県-6.5、45位 神奈川県-5.2、44位 大阪府-1.0、43位 兵庫県-0.6。マイナスになったのはこの5都府県に茨城県(-0.3)と滋賀県(-0.1)を加えた7つだけです。
東京都は物価指数が104.2と全国で最も高いにもかかわらず、年収指数が124.3。物価が4.2%高いことより、年収が24.3%高いことのほうがはるかに効いています。物価で割り戻した実質の年収を計算すると、東京都は650.7万円で47都道府県の1位のまま変わりません。「東京は稼げるが生活費で消える」という言い方は、少なくともこの2つの統計の範囲では成り立ちません。
物差しを家賃を除いた指数に変えても、結論は同じです。沖縄県は+25.9、東京都は-22.1で、順位はほとんど動きません。住居の指数だけは東京都129.8に対して岡山県79.1と1.64倍の開きがありますが、住居は物価指数全体の一部にすぎないため、総合には1.08倍分しか反映されません。
最後に、旧版のこの記事との違いです。旧版は1位東京都、2位神奈川県、3位大阪府、4位京都府、5位福岡県としていましたが、この軸では東京都が47位(最下位)、神奈川県45位、大阪府44位、京都府38位、福岡県28位です。旧版が挙げた10地域のうち、上位10に入ったものはひとつもありません。最も近いのは10位とした北海道の11位でした。
この記事の数値は、次の統計から集計しています。


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