中国のIT産業が強い都市ランキング

中国のIT産業が強い都市ランキング エンタメ

中国のIT産業といえば、まず名前が挙がるのは北京と深圳でしょう。では3番手以降はどうなっているのか。杭州か、上海か、それとも成都か——ここから先は、数字を見ないと分かりません。

使うのは中国政府・工業情報化部(MIIT)がまとめた中国ソフトウェア産業統計年鑑2024。ソフトウェア・情報技術サービス業の売上を、省と主要都市それぞれについて集計したものです。2024年の実績で、金額の単位は元です。

この統計で市単位の数値が公表されているのは、4つの直轄市(北京・上海・天津・重慶)と15の副省級都市を合わせた19市。今回はこの19市を、ソフトウェア業務収入が多い順に並べました。

2024年の中国全体のソフトウェア業務収入は13兆6509億元、企業数は3万8493社です。

※以下、断りのない数値はすべて中国ソフトウェア産業統計年鑑2024(2024年実績)によるものです。

順位 都市 2024年のソフトウェア業務収入 2024年のソフトウェア企業数 情報技術サービスが収入に占める割合
1位 北京 3兆1164億元 4,979社 76.3%
2位 深圳 1兆3437億元 1,808社 71.6%
3位 上海 1兆2237億元 1,411社 81.7%
4位 南京 8740億元 4,245社 62.4%
5位 杭州 8453億元 702社 84.0%
6位 広州 7698億元 2,888社 67.9%
7位 済南 5953億元 3,037社 57.6%
8位 成都 5914億元 1,619社 64.4%
9位 青島 5144億元 2,285社 31.6%
10位 武漢 3500億元 1,280社 72.7%

11位以下は、重慶3499億元、天津3454億元、厦門1741億元、瀋陽1338億元、大連1144億元、寧波816億元、西安639億元、長春476億元、ハルビン72億元と続きます。

10位の武漢と11位の重慶は、差が1億元ほどしかありません。全体の0.03%にあたる差なので、この2市は事実上並んでいると見たほうが正確です。

表の右端は、ソフトウェア業務収入のうち情報技術サービス(受託開発、クラウド、システム運用など)が占める割合です。この数字が低い都市は、製品としてのソフトウェアや、機器に組み込まれるソフトウェアの比重が高いことを意味します。青島の31.6%と杭州の84.0%では、同じ「IT産業が強い都市」でも中身がまったく違います。

1位 北京:3兆1164億元。2位の2.3倍

北京のソフトウェア業務収入は3兆1164億元で、2位の深圳の2.3倍。中国全体13兆6509億元の22.8%を、この1市が占めます。

企業数は4979社で、19市のなかで最も多い。1社あたりの収入は6.26億元になります。

収入の内訳を見ると、情報技術サービスが2兆3782億元で全体の76.3%。ソフトウェア製品収入は6735億元(21.6%)にとどまります。受託開発やクラウド、プラットフォーム運営といったサービス型の事業が中心の構造です。

省・直轄市の単位で見ても北京は全国1位で、2位の広東省(2兆2753億元)を8411億元上回ります。広東省には深圳と広州の両方が含まれていますから、都市単位で比べると北京の突出ぶりはさらに際立ちます。

2位 深圳:1兆3437億元。1808社で1兆円台を生む

深圳のソフトウェア業務収入は1兆3437億元。広東省全体(2兆2753億元)の59.1%を、深圳1市が占めている計算です。

目を引くのは企業数の少なさです。1808社は、4位の南京(4245社)の半分以下。それでいて収入は南京の1.5倍あります。1社あたりの収入は7.43億元で、北京の6.26億元を上回ります。

情報技術サービスが71.6%を占める一方、組み込みソフトウェアの収入が2280億元(17.0%)と大きいのも特徴です。通信機器や端末の製造が集積している都市の構造が、ソフトウェアの統計にも表れている形といえます。

3位 上海:1兆2237億元。情報技術サービスが81.7%

上海のソフトウェア業務収入は1兆2237億元で、深圳とは1200億元差。企業数は1411社と19市のなかでも少ないほうで、1社あたりの収入は8.67億元。これは深圳や北京を上回る水準です。

収入の81.7%が情報技術サービスで、組み込みソフトウェアは73億元(0.6%)とほとんどありません。製造に紐づかない、サービス専業型の構造がはっきり出ています。

19市のなかで情報技術サービスの比率が8割を超えるのは、上海と杭州の2市だけです。

4位 南京:8740億元。4245社という企業数の多さ

南京のソフトウェア業務収入は8740億元、5位の杭州とは287億元差です。

この市の特徴は企業数にあります。4245社は北京(4979社)に次いで19市で2番目。一方で1社あたりの収入は2.06億元と、上位10市のなかでは最も低い水準になります。大企業が引っ張る構造ではなく、中小の事業者が数多く積み上がっている形です。

情報技術サービスの比率は62.4%で、ソフトウェア製品収入が2849億元(32.6%)と上位10市で最も高い比率を占めます。パッケージ製品を作る事業者の層が厚い、と読める構成です。

5位 杭州:8453億元。1社あたり12億元は19市で最高

杭州のソフトウェア業務収入は8453億元。企業数は702社しかなく、1社あたりの収入は12.04億元に達します。これは19市のなかで最も高い数字です。

比較すると分かりやすい。南京は4245社で8740億元、杭州は702社で8453億元。企業数が6分の1で、収入はほぼ同じです。

情報技術サービスの比率も84.0%で19市中最高。ソフトウェア製品収入は1183億元(14.0%)、組み込みソフトウェアは126億元(1.5%)にとどまります。少数の大規模なプラットフォーム事業者に収入が集中している構造だと考えられますが、この統計から確かめられるのは企業数と収入の関係までです。

6位 広州:7698億元。広東省のもう一つの拠点

広州のソフトウェア業務収入は7698億元、企業数は2888社、1社あたり2.67億元です。

同じ広東省の深圳(1兆3437億元)とは5739億元の差があります。2市を合わせると2兆1135億元で、広東省全体2兆2753億元の92.9%。広東省のソフトウェア産業は、ほぼこの2市に集中していることになります。

情報技術サービスの比率は67.9%、ソフトウェア製品収入が2225億元(28.9%)。深圳と比べると組み込みソフトウェアの比重が小さく(185億元、2.4%)、より汎用的な構成です。

7位 済南:5953億元。山東省の中核

済南のソフトウェア業務収入は5953億元、企業数は3037社で19市中3番目の多さ。1社あたりは1.96億元と、上位10市で最も低くなります。

情報技術サービスの比率は57.6%で、上位10市のなかで青島に次いで低い数字です。ソフトウェア製品収入が1687億元(28.3%)、組み込みソフトウェアが651億元(10.9%)と、サービス以外の比重が相応にあります。

山東省全体のソフトウェア業務収入は1兆4753億元で全国4位。そのうち済南が40.4%、青島が34.9%を占め、この2市で省全体の75.3%になります。

8位 成都:5914億元。内陸で最大のIT拠点

成都のソフトウェア業務収入は5914億元、7位の済南とは39億元差でほぼ並んでいます。企業数は1619社、1社あたり3.65億元。

四川省全体が6092億元ですから、その97.1%を成都1市が占めている計算です。上位10市のなかで、省内の集中度がこれほど高い都市はほかにありません。

情報技術サービスの比率は64.4%、ソフトウェア製品収入が1577億元(26.7%)。沿海部の都市と比べても、構成そのものに大きな偏りはありません。内陸にありながら沿海の主要都市と同じ型で伸びている、という位置づけになります。

9位 青島:5144億元。組み込みソフトウェアが53.4%

青島のソフトウェア業務収入は5144億元、企業数は2285社です。

この市の数字は、ほかの9市とはっきり違います。情報技術サービスの比率が31.6%しかなく、代わりに組み込みソフトウェアが2746億元、全体の53.4%を占めます。収入の半分以上が、機器に組み込まれるソフトウェアだということです。

組み込みソフトウェアの金額そのものも、北京(167億元)や上海(73億元)とは桁が違い、19市のなかで最大です。2位の深圳(2280億元)を上回ります。

家電メーカーの本社が置かれている都市であることと関係している可能性はありますが、今回の統計で確認できるのは収入の構成までです。

10位 武漢:3500億元。重慶とほぼ並ぶ

武漢のソフトウェア業務収入は3500億元、企業数は1280社、1社あたり2.73億元です。

冒頭で触れたとおり、11位の重慶(3499億元)との差は1億元ほど。順位としては10位ですが、実質的には同水準と見るべき数字です。

情報技術サービスの比率は72.7%と高く、ソフトウェア製品収入は668億元(19.1%)。湖北省全体3525億元のうち99.3%を武漢が占めており、成都と同じく省内の一極集中型です。

まとめ

上位10市で中国全体のソフトウェア業務収入の63.5%を占めます。なかでも北京・深圳・上海の3市だけで41.6%。中国のIT産業は、都市単位で見るとかなり偏った分布をしています。

企業数と収入の関係を見ると、都市の性格が分かれます。1社あたりの収入は、杭州12.04億元、上海8.67億元、深圳7.43億元、北京6.26億元、成都3.65億元、武漢2.73億元、広州2.67億元、青島2.25億元、南京2.06億元、済南1.96億元。杭州と済南では6倍の開きがあります。少数の大手に集中している都市と、中小が数で積み上げている都市が、同じランキングに並んでいるということです。

収入の中身でも分かれます。情報技術サービスが8割を超えるのが杭州(84.0%)と上海(81.7%)。逆に青島は31.6%で、組み込みソフトウェアが53.4%を占めます。サービス型、製品型、組み込み型——「IT産業が強い」の中身は、都市ごとに別物です。

省との関係も押さえておきます。成都は四川省の97.1%、武漢は湖北省の99.3%を占める一極集中型。一方で広東省は深圳と広州、山東省は済南と青島と、2市で分け合う形になっています。省の数字だけを見ていると、この違いは見えません。

この記事の数値は、次の統計から集計しています。

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