アメリカで賃金が伸びた州はどこか。テック企業の本社がある州を思い浮かべる人が多いと思いますが、実際に並べてみると、名前の知られていない州がいくつも上位に入ってきます。
今回使うのは、米国労働統計局の雇用・賃金四半期センサス(QCEW)。失業保険の対象になっている事業所の賃金支払総額を集計した統計で、州ごとの平均年間賃金が公表されています。2019年から2025年への6年間の伸び率で並べました。
※平均年間賃金は、年間の賃金支払総額を年平均雇用者数で割った額。全産業・全所有形態の合計です。コロンビア特別区・プエルトリコ・バージン諸島は州ではないため順位から外しました(数値はまとめに記載)。2020年を起点にしなかった理由は本文の後半で説明します。
| 順位 | 州名 | 2019年の平均年間賃金 | 2025年の平均年間賃金 | 6年間の伸び率 | 2025年の水準の順位(50州中) |
|---|---|---|---|---|---|
| 1位 | ワシントン州 | 69,593ドル | 99,675ドル | +43.2% | 3位 |
| 2位 | アイダホ州 | 44,264ドル | 62,392ドル | +41.0% | 45位 |
| 3位 | フロリダ州 | 51,741ドル | 72,772ドル | +40.6% | 20位 |
| 4位 | モンタナ州 | 44,883ドル | 62,882ドル | +40.1% | 43位 |
| 5位 | メイン州 | 47,188ドル | 65,787ドル | +39.4% | 33位 |
| 6位 | ニューハンプシャー州 | 58,671ドル | 80,892ドル | +37.9% | 9位 |
| 7位 | サウスカロライナ州 | 46,383ドル | 63,728ドル | +37.4% | 36位 |
| 8位 | ノースカロライナ州 | 52,379ドル | 71,533ドル | +36.6% | 21位 |
| 9位 | ユタ州 | 50,766ドル | 69,316ドル | +36.5% | 27位 |
| 10位 | バーモント州 | 49,337ドル | 67,247ドル | +36.3% | 30位 |
11位以下は、テネシー州+36.2%、コロラド州+36.1%、カリフォルニア州+35.9%、ネバダ州+35.7%、アリゾナ州+35.5%と続きます。
全米の平均年間賃金は同じ6年間で59,209ドルから78,720ドルへ+33.0%。これを上回ったのは50州のうち22州でした。
表の右端を見ると、上位10のほとんどが賃金の水準そのものは中位から下位です。アイダホ州は45位、モンタナ州は43位、サウスカロライナ州は36位。伸び率のランキングは、低いところから追い上げた州が並びやすい構造になっています。その例外がワシントン州で、水準3位でありながら伸び率も1位でした。
1位 ワシントン州:+43.2%
69,593ドルから99,675ドルへ。6年で3万ドル増えました。2位のアイダホ州とは2.3ポイント差です。
特筆すべきは、水準と伸びの両方で上位に入っている唯一の州だということ。2019年には全米5位だった賃金水準が、2025年には3位に上がりました。上位10の他の9州は、いずれも水準が9位以下です。
2位 アイダホ州:+41.0%
44,264ドルから62,392ドルへ。伸び率は2位ですが、2025年の水準は50州中45位です。
2019年の水準は49位でした。6年で4つ順位を上げたことになりますが、金額で見ると全米平均78,720ドルとの差はまだ16,328ドルあります。
3位 フロリダ州:+40.6%
51,741ドルから72,772ドルへ。上位10のなかで最も雇用規模が大きく、2025年の年平均雇用者数は991万人です。
水準の順位は2019年の26位から2025年の20位へ。1,000万人近い雇用を抱えた州がこれだけ伸びている例は、上位10のなかではフロリダ州だけです。
4位 モンタナ州:+40.1%
44,883ドルから62,882ドルへ。3位のフロリダ州とは0.5ポイント差です。
水準は48位から43位へ。アイダホ州と並んで、出発点が低い州の追い上げという性格がはっきり出ています。年平均雇用者数は51万人で、上位10のなかではバーモント州に次いで小さい規模です。
5位 メイン州:+39.4%
47,188ドルから65,787ドルへ。水準は42位から33位へと、上位10のなかで最も大きく順位を上げました。
9つ順位が上がったのはメイン州だけで、次に大きいのはサウスカロライナ州の9つ(45位→36位)です。
6位 ニューハンプシャー州:+37.9%
58,671ドルから80,892ドルへ。水準9位は、上位10のなかでワシントン州に次いで高い位置です。
2019年の水準は13位。全米平均を上回る水準の州で、かつ伸び率も上位10に入ったのは、ワシントン州とこの州の2つだけです。
7位 サウスカロライナ州:+37.4%
46,383ドルから63,728ドルへ。水準は45位から36位へ9つ上昇し、メイン州と並ぶ上げ幅です。
それでも2025年の63,728ドルは全米平均より15,000ドル近く低く、伸びたことと高いことは別だということが分かる例になっています。
8位 ノースカロライナ州:+36.6%
52,379ドルから71,533ドルへ。年平均雇用者数494万人は、上位10のなかでフロリダ州に次ぐ規模です。
水準は24位から21位へ。隣のサウスカロライナ州(36位)とは、伸び率で0.8ポイントしか違わないのに、金額では7,805ドルの差があります。
9位 ユタ州:+36.5%
50,766ドルから69,316ドルへ。8位のノースカロライナ州とは0.03ポイント差で、実質的には同着です。
水準は29位から27位へと2つの上昇にとどまりました。上位10のなかで、水準の順位の動きが最も小さい州です。
10位 バーモント州:+36.3%
49,337ドルから67,247ドルへ。年平均雇用者数30万8,225人は上位10で最も小さく、フロリダ州の32分の1です。
水準は33位から30位へ。11位のテネシー州とは0.1ポイント差しかなく、この順位も横並びと見るのが正確です。
まとめ
まず、この記事が2019年を起点にした理由です。50州のうち43州で、この6年間の1年ごとの上昇率が最も大きかったのは2019年から2020年にかけてでした。同じ年、全米の年平均雇用者数は1億4,810万人から1億3,910万人へ、900万人減っています。平均を押し上げたのが賃上げなのか、賃金の低い雇用が失われたことなのかは、この統計だけでは切り分けられません。2020年を起点にすると伸び率が小さく見えてしまうため、その前年から数えました。
次に、水準で並べ替えるとどうなるか。2025年の平均年間賃金が高い州は、1位 マサチューセッツ州100,085ドル、2位 ニューヨーク州99,941ドル、3位 ワシントン州99,675ドル、4位 カリフォルニア州96,963ドル、5位 コネチカット州90,982ドル。このうち伸び率でも上位10に入ったのはワシントン州だけで、マサチューセッツ州は23位、ニューヨーク州は24位、コネチカット州は36位です。
順位から外したコロンビア特別区は128,901ドルで、どの州より高い水準です。伸び率は+31.5%で、州に混ぜても30位相当にとどまります。
伸び率の下位は、50位 ノースダコタ州+24.9%、49位 オクラホマ州+27.0%、48位 ワイオミング州+27.4%、47位 ルイジアナ州+28.0%、46位 ニュージャージー州+28.0%。最も伸びたワシントン州と最も伸びなかったノースダコタ州の差は18.3ポイントです。
最後に、旧版のこの記事との違いを書いておきます。旧版はテキサス州を1位としていましたが、この統計では50州中37位(+30.4%)で、全米平均も下回っています。旧版が4位としたワシントン州は実際には1位、5位としたコロラド州は12位、6位としたジョージア州は25位、8位としたアリゾナ州は15位でした。旧版が上位10に挙げた州のうち、実際に上位10に入ったのはワシントン州だけです。
この記事の数値は、次の統計から集計しています。


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