アジアで殺人発生率が高い国ワースト10

アジアで殺人発生率が高い国ワースト10 エンタメ

「犯罪率」という言葉には、決まった定義がありません。窃盗も詐欺も暴行も含めた件数は、国によって数え方も届け出のされ方も違うため、そのまま並べても比較になりません。

国際的に比較できる数少ない指標が殺人発生率です。人口10万人あたりの故意の殺人による死者数で、国連薬物犯罪事務所(UNODC)が各国の統計をもとにまとめ、世界銀行が公開しています。遺体が残るぶん、他の犯罪より届け出の漏れが少ないとされる指標です。

アジアの48の国・地域を対象にしたところ、数値があったのは38か国。北朝鮮、ブルネイ、カンボジア、ラオス、タイ、ベトナム、イラン、イラク、シリア、イエメンの10か国には、この統計に数値がありません。数値がないことは、治安が良いとも悪いとも意味しません。

あわせて、各国に出ている外務省の危険情報の最高レベルも並べました。犯罪の統計と、日本政府が渡航者に向けて出している注意喚起は、必ずしも同じ方向を向きません。

※殺人発生率は各国の最新年の数値で、年はばらばらです。対象は東アジア・東南アジア・南アジア・中央アジア・西アジア(中東)の国。香港とマカオ、台湾は統計に収録がないため含みません。危険情報は2026年9月23日時点の内容です。

順位 国名 殺人発生率(人口10万人あたり) 統計の年 外務省の危険情報の最高レベル その対象地域
1位 モンゴル 5.92件 2023年 発出なし —
2位 フィリピン 4.35件 2023年 レベル3(渡航中止勧告) ミンダナオ地方の一部
3位 パキスタン 4.33件 2023年 レベル4(退避勧告) アフガニスタン国境周辺地帯ほか
4位 東ティモール 4.07件 2015年 レベル1(十分注意) 全土
5位 アフガニスタン 4.03件 2021年 レベル4(退避勧告) 全土
6位 スリランカ 3.31件 2019年 レベル1(十分注意) 全土
7位 トルコ 3.23件 2023年 レベル4(退避勧告) シリアとの国境地帯
8位 インド 2.82件 2022年 レベル4(退避勧告) ジャンム・カシミール準州の一部ほか
9位 ミャンマー 2.58件 2023年 レベル3(渡航中止勧告) ラカイン州の一部ほか
10位 カザフスタン 2.55件 2022年 レベル1(十分注意) 全土

11位以下は、ブータン2.47件、バングラデシュ2.34件、レバノン2.24件、アルメニア2.21件、アゼルバイジャン2.16件と続きます。

表を見てすぐ分かるのは、殺人発生率の順位と危険情報の重さが一致しないことです。1位のモンゴルには危険情報が出ていません。4位の東ティモール、6位のスリランカ、10位のカザフスタンは全土がレベル1で、4段階ある危険情報のなかで最も軽い区分です。逆にレベル4が出ているパキスタン・アフガニスタン・トルコ・インドのうち、トルコとインドの対象は国境付近や紛争地域に限られています。

1位 モンゴル:5.92件

人口10万人あたり5.92件(2023年)。アジア38か国で最も高い数字です。

そして外務省の危険情報は出ていません。上位10のなかで、危険情報がまったく出ていないのはモンゴルだけです。

世界全体で見ると、モンゴルの5.92件は163の国・地域のなかで50位。すぐ下の51位がアメリカの5.76件です。アジアで最も殺人発生率が高い国が、アメリカとほぼ同じ水準だということになります。

2位 フィリピン:4.35件

4.35件(2023年)。3位のパキスタンとの差は0.01件で、順位に意味のない差です。

危険情報の最高レベルは3で、対象はミンダナオ地方の一部(北サンボアンガ州、スールー州など)。首都マニラを含む大部分はレベル1です。

3位 パキスタン:4.33件

4.33件(2023年)。数値はフィリピンとほぼ同じですが、危険情報の中身はまったく違います。

最高はレベル4(退避勧告)で、対象はアフガニスタンとの国境周辺地帯、旧連邦直轄部族地域の全域、インドとの管理ライン周辺、バロチスタン州クエッタ市。上位10のなかで、レベル4の指定地域が最も広い国です。2026年5月27日に更新されています。

4位 東ティモール:4.07件

4.07件。ただし統計の年は2015年で、上位10のなかで最も古い数字です。11年前の値で順位が付いていることになります。

危険情報は全土がレベル1。2026年5月28日の更新で、一般犯罪と若年層グループの抗争に注意を促す内容です。

5位 アフガニスタン:4.03件

4.03件。ただし統計の年は2021年で、タリバーンが実権を握った年にあたります。それ以降の数値はこの統計に載っていません。

危険情報は全土がレベル4(退避勧告)。上位10で全土がレベル4なのはこの国だけです。外務省は「殺人、強盗、誘拐などの犯罪は漸増傾向」と記しており、統計の数字と現地の状況が離れている可能性が高い国です。

6位 スリランカ:3.31件

3.31件。統計の年は2019年で、コロンボなどで連続爆破テロが起きた年です。

危険情報は全土レベル1(2024年12月20日)。外務省は「現在は大規模かつ組織的なテロが発生する可能性は低いとされています」と書いており、2019年の数字がいまの状況を表しているとは限りません。

7位 トルコ:3.23件

3.23件(2023年)。西アジアの国では最も高い数字です。

危険情報の最高はレベル4ですが、対象はシリアとの国境地帯のみ。イスタンブールはレベル1です。同じレベル4でも、アフガニスタン(全土)とはまったく意味が違います。

8位 インド:2.82件

2.82件(2022年)。人口14億人規模の国の数字で、件数にすればアジアで最も多くなります。

危険情報はレベル4がジャンム・カシミール準州及びラダック連邦直轄領の管理ライン付近、レベル3がジャンム・カシミール準州の一部。北東部諸州の一部がレベル2で、それ以外の大部分は対象外です。

9位 ミャンマー:2.58件

2.58件(2023年)。10位のカザフスタンとは0.03件差です。

危険情報の最高はレベル3で、対象はラカイン州マウンドー県など、シャン州コーカン自治地帯、カチン州ライザー周辺、カレン州ミヤワディ地区。2025年7月31日時点で戒厳令が発令された地区は63地区にのぼると外務省は記載しています。

10位 カザフスタン:2.55件

2.55件(2022年)。中央アジア5か国のなかで最も高い数字です。

危険情報は全土レベル1(2026年2月10日)。外務省は「カザフスタンの治安は概ね安定しています」としつつ、2022年の騒擾で強奪された銃器の多くが未発見であることを懸念として挙げています。

まとめ

低いほうも見ておきます。アジア38か国で最も低いのはシンガポールとカタールの0.07件(同率)。次いでオマーン0.14件、バーレーン0.20件、日本0.23件(34位)、クウェート0.25件、インドネシア0.30件と続きます。1位のモンゴルと最下位のシンガポール・カタールでは85倍の開きがあります。

この記事を世界の物差しに置き直すと、印象はさらに変わります。世界163の国・地域で最も殺人発生率が高いのはタークス・カイコス諸島76.34件、次いでセントクリストファー・ネービス64.16件、セントビンセント・グレナディーン51.32件、ジャマイカ49.44件、エクアドル45.72件。アジアの1位であるモンゴルの5.92件は、世界1位の13分の1以下です。

最後に、旧版のこの記事との違いです。旧版は1位アフガニスタン、2位イラク、6位タイ、10位マレーシアとしていましたが、この統計ではアフガニスタンは5位、イラクとタイには数値がありません。マレーシアは0.73件で38か国中26位です。旧版が4位としたバングラデシュは12位、9位としたモンゴルが実際には1位でした。

また、旧版は「犯罪率」という言葉で窃盗や詐欺までを含む印象を与えていましたが、国際的に比較できる犯罪統計は事実上この殺人発生率だけです。旅行者が実際に遭いやすいスリや置き引きの発生率を国際比較した公的統計は存在しません。

この記事の数値は、次の統計から集計しています。

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