石油の国、銅の国、ダイヤモンドの国。ひとつの産業で経済が回っている国は、輸出の中身を見るとすぐに分かります。
今回の軸は、世界銀行がまとめている商品輸出の分野別構成比。輸出される「モノ」を次の5つに分け、最も大きい分野が輸出全体の何%を占めるかで並べました。2024年の数値です。
- 燃料(石油・天然ガス・石炭など)
- 鉱物・金属(金属鉱石、非鉄金属など。貴石は含まない)
- 食料(食品・飲料・たばこ・油脂)
- 農産原料(木材・綿花・天然ゴムなど)
- 工業製品(化学品・機械・輸送機器・雑製品)
このうち工業製品を除く4分野で比較しています。工業製品はあまりに幅が広く、「機械も化学品も衣類もつくっている国」が上位に来てしまい、ひとつの産業に依存している国を探すという目的に合わないためです。4分野すべての数値がある124か国が対象になりました。
※数値は世界銀行「World Development Indicators」の2024年の値。商品輸出(モノの輸出)が対象で、サービス輸出は含みません。
| 順位 | 国名 | 最も大きい分野 | その分野が輸出に占める割合 | 工業製品が輸出に占める割合 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | ベリーズ | 食料 | 95.7% | 3.0% |
| 2位 | モルディブ | 食料 | 94.4% | 1.2% |
| 3位 | アンゴラ | 燃料 | 94.1% | 1.1% |
| 4位 | ガイアナ | 燃料 | 91.9% | 0.5% |
| 5位 | クウェート | 燃料 | 90.7% | 8.1% |
| 6位 | ガンビア | 食料 | 90.7% | 1.0% |
| 7位 | マラウイ | 食料 | 90.2% | 8.0% |
| 8位 | ナイジェリア | 燃料 | 88.6% | 3.5% |
| 9位 | ニジェール | 燃料 | 88.0% | 7.3% |
| 10位 | アゼルバイジャン | 燃料 | 88.0% | 4.8% |
11位以下は、セーシェル(食料85.9%)、アンティグア・バーブーダ(食料84.7%)、カタール(燃料83.8%)、サウジアラビア(燃料79.4%)、オマーン(燃料77.2%)、ブルネイ(燃料75.5%)と続きます。
イラク、アルジェリア、ベネズエラ、トルクメニスタンは、この4分野の数値が公表されていないため順位に入れていません。ロシアは2021年が最新で燃料43.1%、アラブ首長国連邦は2023年で燃料68.2%です。
表を見て意外に思えるのは、上位10のうち5か国が食料だということ。石油の国だけが並ぶわけではありません。もうひとつ、右端の「工業製品の割合」を見ると、上位10のうち7か国が10%未満。輸出が一方に偏るということは、もう一方が育っていないということでもあります。
1位 ベリーズ:食料が95.7%
中米の国で、輸出の95.7%が食料。工業製品はわずか3.0%です。
124か国のなかで、ひとつの分野が95%を超えるのはベリーズだけ。2番目に大きい分野は農産原料の0.9%で、その差は94.8ポイントあります。
2位 モルディブ:食料が94.4%
インド洋の島国で、食料が輸出の94.4%。工業製品は1.2%です。
2番目に大きい分野は鉱物・金属の4.3%。観光で知られる国ですが、ここで見ているのはモノの輸出だけで、観光収入はサービス輸出にあたるため含まれていません。この国の場合、統計が捉えているのは経済の一部だけだということになります。
3位 アンゴラ:燃料が94.1%
輸出の94.1%が燃料で、工業製品は1.1%。燃料に偏っている国としては124か国で最も高い数字です。
2番目は鉱物・金属の4.4%。石油以外の輸出がほとんど存在しない構造になっています。
4位 ガイアナ:燃料が91.9%。工業製品は0.5%
南米の国で、燃料が91.9%。注目したいのは工業製品の0.5%で、これは上位10のなかで最も低い数字です。
2番目に大きい分野は食料の2.0%。上位10のなかで、1位の分野と2位の分野の差が最も大きい国のひとつです。
5位 クウェート:燃料が90.7%
燃料が90.7%、工業製品が8.1%。湾岸の産油国としては、この記事の上位で最も高い順位に入ります。
6位のガンビアとは0.07ポイント差で、実質的には同着です。
6位 ガンビア:食料が90.7%
西アフリカの国で、食料が輸出の90.7%。工業製品は1.0%です。
2番目に大きい分野は鉱物・金属の7.3%。クウェートと同じ水準の偏り方を、まったく違う産業でつくっていることになります。
7位 マラウイ:食料が90.2%
食料が90.2%、工業製品が8.0%。2番目に大きい分野は農産原料の0.9%です。
上位10で食料に偏っている5か国のうち、マラウイだけが内陸国。島国でも沿岸国でもない国が、ここまで食料に偏るのは珍しい形です。
8位 ナイジェリア:燃料が88.6%
燃料が88.6%、工業製品が3.5%、2番目は食料の6.0%。
人口2億3,268万人(2024年)はアフリカ最大で、上位10のなかでも群を抜いています。人口規模が大きい国でここまで輸出が偏っているのは、この順位表ではナイジェリアだけです。
9位 ニジェール:燃料が88.0%
燃料が88.0%(正確には87.99%)、工業製品が7.3%。2番目は食料の4.1%です。
10位のアゼルバイジャンとの差は0.01ポイント。小数点以下2桁まで見てようやく順位がつく差で、どちらが上とも言いにくい関係です。
10位 アゼルバイジャン:燃料が88.0%
燃料が88.0%(87.98%)、工業製品が4.8%、2番目は食料の4.1%です。
カスピ海沿岸の産油国で、上位10のうち旧ソ連圏から入ったのはこの1か国だけになります。
まとめ
逆に、輸出が最も分散している側を見ておきます。中国は最も大きい分野でも食料の2.4%で124か国の最下位。工業製品が91.2%を占めます。日本は122位で、最も大きい分野は鉱物・金属の3.4%、工業製品が82.5%。ドイツは118位(食料6.3%・工業製品84.1%)です。
アメリカは77位で、燃料が18.3%、工業製品が55.7%。先進国のなかでは資源輸出の比重がやや高い位置にいます。
中間層にあたるのが資源国のなかの大きい国で、ザンビアは鉱物・金属73.0%で18位、カザフスタンは燃料56.7%で28位、チリは鉱物・金属56.1%で29位。銅の国として知られるチリでも、上位10には入りません。
最後にひとつ。旧版のこの記事はボツワナをダイヤモンド依存の国として10位に挙げていましたが、この統計ではボツワナの鉱物・金属は10.7%、工業製品が86.3%です(2023年)。世界銀行の区分では「鉱物・金属」に貴石は含まれず、ダイヤモンドは加工された段階で工業製品の側に数えられます。何に依存しているかは、統計の区分の切り方によって見え方が変わります。
この記事の数値は、次の統計から集計しています。


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