世界銀行が公表する殺人発生率(人口10万人あたりの故意の殺人)を使って、2013年から直近までにどれだけ下がったかを計算し、低下幅の大きい順に並べました。1位はホンジュラスで、72.35件から31.44件へ40.90件の低下です。
比べられたのは103か国。このうち殺人発生率が下がったのは67、上がったのは36でした。
順位の決め方
使ったのは世界銀行の世界開発指標「Intentional homicides (per 100,000 people)」です。出所は国連薬物犯罪事務所(UNODC)の集計で、殺人は国による定義のぶれが小さく、通報率も高いため、国際比較に使える数少ない犯罪統計とされています。
2013年の値がある国のうち、2020年以降に直近値がある103か国を対象としました。直近値の年は国によって2021年・2022年・2023年と異なるため、表に基準年の列を立てています。香港、マカオ、プエルトリコ、ケイマン諸島など国でない地域は、順位から外しました。
順位は「2013年の値 − 直近値」の低下幅で付けています。低下率(何%下がったか)で並べると顔ぶれが変わるため、その並びはまとめに載せました。
※本記事の数値は2026年9月時点で世界銀行が公表している値に基づきます。
殺人発生率の低下幅が大きい10か国
| 順位 | 国 | 低下幅(件) | 2013年 | 直近値 | 基準年 | 低下率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | ホンジュラス | 40.90 | 72.35 | 31.44 | 2023 | −56.5% |
| 2 | エルサルバドル | 33.04 | 40.94 | 7.90 | 2022 | −80.7% |
| 3 | グアテマラ | 10.14 | 33.50 | 23.37 | 2023 | −30.3% |
| 4 | セーシェル | 9.66 | 17.63 | 7.97 | 2022 | −54.8% |
| 5 | ブラジル | 9.37 | 28.64 | 19.28 | 2023 | −32.7% |
| 6 | コロンビア | 8.50 | 33.42 | 24.91 | 2023 | −25.4% |
| 7 | ドミニカ共和国 | 8.49 | 19.40 | 10.92 | 2023 | −43.7% |
| 8 | パナマ | 5.62 | 17.33 | 11.71 | 2023 | −32.5% |
| 9 | ロシア | 4.32 | 11.09 | 6.77 | 2021 | −39.0% |
| 10 | モルドバ | 4.17 | 6.72 | 2.54 | 2023 | −62.1% |
1位 ホンジュラス:72.35件から31.44件へ
ホンジュラスの殺人発生率は2013年の72.35件から2023年の31.44件へ、40.90件下がりました。103か国で最も大きい低下幅です。
2位エルサルバドルとの差は7.86件。ただし31.44件という水準そのものは、2013年の日本(0.29件)の108倍にあたります。下がった幅は大きくても、依然として高い水準にあります。
2位 エルサルバドル:低下率−80.7%
エルサルバドルは40.94件から7.90件へ33.04件の低下。低下率は−80.7%で、上位10のなかで最も大きい下がり方です。
3位グアテマラとの差は22.90件あり、上位10のなかで隣り合う順位の差としては最大。1位・2位と3位以下の間には、はっきりした段差があります。
3位 グアテマラ:33.50件から23.37件へ
グアテマラは33.50件から23.37件へ10.14件の低下。低下率は−30.3%です。
2013年の水準33.50件は上位10のなかでホンジュラス、エルサルバドルに次ぐ3番目の高さでした。4位セーシェルとの差は0.47件しかありません。
4位 セーシェル:上位10で唯一のアフリカの国
セーシェルは17.63件から7.97件へ9.66件の低下。低下率は−54.8%です。
上位10のうち7か国が中南米・カリブ海の国で、セーシェルはアフリカから唯一入りました。5位ブラジルとの差は0.30件です。
5位 ブラジル:28.64件から19.28件へ
ブラジルは28.64件から19.28件へ9.37件の低下。低下率は−32.7%でした。
6位コロンビアとの差は0.86件。この2か国は2013年の水準(28.64件と33.42件)も直近値(19.28件と24.91件)も近く、似た動き方をしています。
6位 コロンビア:低下率は上位10で最も小さい
コロンビアは33.42件から24.91件へ8.50件の低下。ただし低下率は−25.4%で、上位10のなかでは最も小さい下がり方です。
7位ドミニカ共和国との差は0.02件しかなく、上位10で最も僅差の順位でした。小数第2位まで見ても並んでいると考えるべき差です。
7位 ドミニカ共和国:19.40件から10.92件へ
ドミニカ共和国は19.40件から10.92件へ8.49件の低下。低下率は−43.7%です。
8位パナマとの差は2.86件で、上位10のなかでは3番目に大きい区切りです(1番目は2位と3位の22.90件、2番目は1位と2位の7.86件)。
8位 パナマ:17.33件から11.71件へ
パナマは17.33件から11.71件へ5.62件の低下。低下率は−32.5%でした。
上位8か国はいずれも2013年の水準が17件を超えていた国です。9位ロシアからは、もともとの水準が10件台前半に下がります。
9位 ロシア:11.09件から6.77件へ
ロシアは11.09件から6.77件へ4.32件の低下。低下率は−39.0%です。
直近値の基準年が2021年と、上位10のなかで最も古い点には注意が必要です。ほかの9か国は2022年か2023年の値でした。
10位 モルドバ:6.72件から2.54件へ
モルドバは6.72件から2.54件へ4.17件の低下。低下率−62.1%は上位10でエルサルバドルに次ぐ2番目の大きさです。
9位ロシアとの差は0.15件。11位はリトアニアの4.07件低下、12位はカザフスタンの3.83件低下で、この付近も0.1〜0.3件刻みの差が続きます。
まとめ
低下幅で並べると、上位10のうち7か国が中南米・カリブ海の国でした。もともとの水準が高い国ほど、下がる余地も大きくなります。
低下率(何%下がったか)で並べ替えると顔ぶれが変わります。1位オマーン−94.5%(2.53件→0.14件)、2位カタール−84.4%、3位エルサルバドル−80.7%、4位シンガポール−78.1%、5位バーレーン−77.6%。もともとの水準が1桁の国が並び、低下幅では上位に来ません。
旧版の記事が挙げていた10か国のうち、エルサルバドルは2位、コロンビアは6位でしたが、ジャマイカ(96位)、メキシコ(95位)、米国(87位)、南アフリカ(100位)、スペイン(71位)の5か国は、この期間に殺人発生率が上がっています。南アフリカは31.13件から43.72件へ12.59件の上昇でした。ベトナムは世界銀行にこの指標の数値がなく、そもそも比較できません。
最も悪化したのはエクアドルで、10.91件から45.72件へ34.81件の上昇。次いでハイチが10.16件から41.15件へ30.99件上がっています。なお日本は0.29件から0.23件へ0.06件の低下で61位。もともとの水準が世界でも最低水準のため、低下幅では上位に入りません。
算出に使った統計


コメント