アジアの国・地域について、殺人発生率と強盗発生率(どちらも人口10万人あたり)の順位を足し合わせ、合計が小さい順に並べました。1位はシンガポールで、2つの指標の順位が2位と2位、合計4という結果です。
旧版の記事は1位をマレーシアとしていましたが、この2軸で並べるとマレーシアは18位でした。
順位の決め方
対象は国連統計部のM49分類で「アジア」に属する50の国・地域のうち、殺人発生率と強盗発生率の両方に2018年以降の数値がある26です。
- 殺人発生率……世界銀行「Intentional homicides (per 100,000 people)」(出所はUNODC)
- 強盗発生率……UNODC「Violent and sexual crime」データセットの Robbery、人口10万人あたり
それぞれで1位から26位まで順位を付け、2つの順位を足した合計が小さいほど上位としました。合計が同じ場合は、殺人発生率が低いほうを上位に置いています。数値の年は国によって2018年から2024年までばらつくため、表に基準年を添えました。
重度傷害(Serious assault)も候補にしましたが、軸から外しました。同じ指標でブータンが107.5件、モンゴルが0.288件と370倍以上の開きがあり、国による定義や集計方法の違いが大きすぎるためです。強盗にも届出率の差はありますが、定義のばらつきはこれよりかなり小さくなります。
※本記事の数値は2026年9月時点で世界銀行およびUNODCが公表している値に基づきます。
犯罪率が低い10の国・地域
| 順位 | 国・地域 | 順位の合計 | 殺人発生率 | 殺人の順位 | 強盗発生率 | 強盗の順位 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | シンガポール | 4 | 0.069(2023年) | 2位 | 0.360(2024年) | 2位 |
| 2 | 日本 | 9 | 0.229(2023年) | 3位 | 1.107(2024年) | 6位 |
| 3 | カタール | 10 | 0.069(2022年) | 1位 | 1.563(2021年) | 9位 |
| 4 | 韓国 | 11 | 0.477(2023年) | 6位 | 0.884(2024年) | 5位 |
| 5 | 中国 | 11 | 0.502(2020年) | 7位 | 0.478(2023年) | 4位 |
| 6 | 香港 | 12 | 0.376(2023年) | 5位 | 1.303(2023年) | 7位 |
| 7 | インドネシア | 15 | 0.304(2022年) | 4位 | 2.035(2024年) | 11位 |
| 8 | サウジアラビア | 16 | 0.935(2019年) | 13位 | 0.443(2019年) | 3位 |
| 9 | UAE | 18 | 0.693(2022年) | 10位 | 1.363(2023年) | 8位 |
| 10 | ミャンマー | 22 | 2.575(2023年) | 21位 | 0.103(2023年) | 1位 |
1位 シンガポール:両方の指標で2位
シンガポールは殺人発生率0.069、強盗発生率0.360。順位の合計4は26の国・地域で最小です。
2位日本との差は5あり、上位10のなかで隣り合う順位の差としては最大。2つの指標のどちらでも2位につけているのはシンガポールだけで、片方だけが突出して低いという形ではありません。
2位 日本:殺人3位・強盗6位
日本は殺人発生率0.229で3位、強盗発生率1.107で6位。順位の合計は9です。
殺人発生率はシンガポール、カタールに次ぐ3番目の低さですが、強盗ではシンガポールの3.08倍。2つの指標で位置づけがずれる国のひとつです。
3位 カタール:殺人発生率は26の国・地域で最も低い
カタールは殺人発生率0.069で1位、強盗発生率1.563で9位。順位の合計は10でした。
殺人発生率はシンガポールと同じ0.069ですが、小数第3位まで見ても並んでいます。基準年がカタール2022年、シンガポール2023年と違う点には注意が必要です。4位韓国との差は1しかありません。
4位 韓国:殺人6位・強盗5位
韓国は殺人発生率0.477で6位、強盗発生率0.884で5位。順位の合計は11です。
5位中国と合計が同じ11で並びましたが、殺人発生率が低いためこちらを4位としました。2つの指標の順位が5位と6位で近く、偏りの小さい国です。
5位 中国:強盗発生率0.478は4番目の低さ
中国は殺人発生率0.502で7位、強盗発生率0.478で4位。順位の合計は11です。
殺人発生率の基準年が2020年と、上位10のなかでサウジアラビア(2019年)に次いで古い点には注意が必要です。6位香港との差は1です。
6位 香港:殺人5位・強盗7位
香港は殺人発生率0.376で5位、強盗発生率1.303で7位。順位の合計は12でした。
上位10のうち、国ではない地域として入っているのは香港だけです。7位インドネシアとの差は3です。
7位 インドネシア:殺人4位・強盗11位
インドネシアは殺人発生率0.304で4位、強盗発生率2.035で11位。順位の合計は15です。
殺人では上位5に入る一方、強盗では11位。2つの指標の順位が7つずれており、上位10のなかではミャンマー(20)、サウジアラビア(10)、カタール(8)に次いで4番目に大きいずれ幅です。
8位 サウジアラビア:強盗3位・殺人13位
サウジアラビアは強盗発生率0.443で3位、殺人発生率0.935で13位。順位の合計は16です。
2つの指標の順位が10ずれており、インドネシアとは逆の形。数値の基準年はどちらも2019年で、上位10のなかで最も古いものです。
9位 UAE:殺人10位・強盗8位
UAEは殺人発生率0.693で10位、強盗発生率1.363で8位。順位の合計は18でした。
2つの指標の順位が10位と8位で近く、バランス型です。10位ミャンマーとの差は4です。
10位 ミャンマー:強盗1位だが殺人は21位
ミャンマーは強盗発生率0.103で1位、殺人発生率2.575で21位。順位の合計は22です。
2つの指標の順位が20もずれており、26の国・地域で最も食い違いの大きい組み合わせでした。殺人発生率2.575は上位10のなかで唯一2件を超えています。11位はマカオの合計24、12位はパレスチナの合計27です。
まとめ
上位10のうち、2つの指標の順位が5以内に収まっているのはシンガポール、日本、韓国、中国、香港、UAEの6つでした。残る4つ——カタール(1位と9位)、インドネシア(4位と11位)、サウジアラビア(13位と3位)、ミャンマー(21位と1位)——は片方に偏っています。指標をひとつだけ見て「治安がよい」と言えないのは、この偏りがあるためです。
旧版の記事が挙げていた10か国のうち、1位のマレーシアは殺人11位・強盗22位で総合18位。強盗発生率12.023は26の国・地域で5番目に高い数字でした。旧版の5位ブルネイ、7位オマーン、10位台湾は、どちらか一方または両方の数値がなく、そもそも比較できません。
この順位には限界もあります。強盗の認知件数は被害の届出率に左右され、届出が少ない国ほど数字が小さく出ます。ミャンマーのように2つの指標が20位も食い違う国では、集計や届出の体制の違いが影響している可能性があります。数字が低いことと、実際に安全であることは、必ずしも同じではありません。
算出に使った統計


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