ヨーロッパで住宅価格の変動が小さい国ランキング【2016年→2026年】

ヨーロッパで住宅価格の変動が小さい 国ランキング【2016年→2026年】 エンタメ

国際決済銀行(BIS)は、各国の実質住宅価格指数と、その前年同期比を四半期ごとに公表しています。ユーロ圏全体で見ると、2016年第1四半期から直近までの41四半期の前年同期比は、平均+1.94%。最も高い四半期が+6.23%、最も低い四半期が-7.16%で、13.4ポイントの幅で上下してきました。

この「上下の振れ幅」は国によって大きく違います。振れの小さい順にヨーロッパ33の国・地域を並べました。

※本記事の数値は、国際決済銀行「Selected residential property prices」(データセット WS_SPP、2026年9月24日更新分)の実質住宅価格指数とその前年同期比に基づきます。

順位の決め方と、対象の範囲

順位は実質住宅価格の前年同期比の標準偏差が小さい順。標準偏差は数値の散らばり方を表す指標で、小さいほど「上がるときも下がるときも幅が小さい」ことを意味します。期間は2016年第1四半期から直近まで。実質(物価上昇分を除いた)価格を使っているため、インフレで名目価格が上がっただけの動きは除かれています。

対象はBISが実質住宅価格指数を公表しているヨーロッパの33の国・地域。直近の四半期はデータの公表時期が国ごとに違い、15か国は2026年第2四半期まで、18か国は2026年第1四半期までの数値を使っています。「安定している」は価格が上がらないことではなく、上下の振れが小さいことを指す点に注意してください。

順位 国・地域 前年同期比の標準偏差 前年同期比の平均 最も高かった四半期 最も低かった四半期 10年間の実質価格の累積変化
1 マルタ 1.68 +3.43% +6.18% -1.35% +42.8%
2 スイス 2.00 +2.40% +6.06% -2.80% +26.1%
3 ベルギー 2.48 +0.80% +5.66% -5.82% +7.8%
4 イタリア 2.76 -0.37% +3.66% -8.11% -4.4%
5 スロベニア 2.86 +5.20% +11.15% -0.87% +69.4%
6 クロアチア 2.88 +5.55% +11.86% -1.30% +74.4%
7 キプロス 2.94 +1.73% +7.62% -4.14% +20.8%
8 スペイン 3.23 +3.80% +10.38% -2.19% +44.3%
9 フランス 3.40 +0.45% +5.77% -7.35% +1.3%
10 ポルトガル 3.46 +8.12% +16.28% +0.65% +124.6%

この10か国の累積変化は-4.4%から+124.6%まで開いています。「振れが小さい」ことと「上がった・下がった」はまったく別の話で、同じ上位10のなかにイタリアとポルトガルが並んでいるのがその証拠です。

第1位 マルタ:標準偏差1.68

最も高かった四半期が+6.18%、最も低かった四半期が-1.35%。この幅7.53ポイントは33の国・地域のなかで最も狭く、2位のスイス(8.87ポイント)より1.34ポイント小さい数字です。

10年間の前年同期比の平均は+3.43%で、累積では+42.8%(33のうち16位)。上がり続けながら急騰も急落もしていない、という形になります。直近の数値は2026年第1四半期の+4.06%です。

第2位 スイス:標準偏差2.00

平均+2.40%、最大+6.06%、最小-2.80%。累積は+26.1%で33のうち22位と、上がり幅はこの10か国のなかでは中位です。

1位のマルタとの差は0.32ポイントで、これは10位までで2番目に大きい段差。直近は2026年第2四半期の+2.95%でした。マイナスの四半期があっても最小が-2.80%にとどまっている点が、ほかの国との違いになります。

第3位 ベルギー:標準偏差2.48

平均+0.80%で、累積は+7.8%(33のうち26位)。10年でほぼ横ばいに近い水準です。

最小の四半期は-5.82%で、1位のマルタ(-1.35%)、2位のスイス(-2.80%)より深く下げています。2位からの差0.48ポイントは10位までで最も大きい段差で、ここが「振れ幅が極端に小さい2か国」と「それ以外」の境目です。直近は2026年第1四半期の+0.59%。

第4位 イタリア:標準偏差2.76

平均は-0.37%で、この10か国のなかで唯一のマイナス。累積も-4.4%で、33のうち31位です。10年間で実質価格が下がった国は33のうち4つ(フィンランド-22.0%、ルーマニア-6.4%、イタリア-4.4%、スウェーデン-1.2%)で、イタリアはそのうち上位10に入った唯一の国になります。

最大+3.66%は、この10か国のなかで最も低い「最高値」です。つまり上に跳ねたことがない。いっぽう最小は-8.11%で、これは10か国のなかで最も深い下げです。直近は2026年第2四半期の+0.97%。

第5位 スロベニア:標準偏差2.86

平均+5.20%、累積+69.4%(33のうち5位)。最小の四半期が-0.87%と、下げがほとんど起きていません。

最大は+11.15%で、この10か国で3番目に高い「最高値」(上はポルトガルの+16.28%とクロアチアの+11.86%)。10年のあいだ毎年のように5%前後で上がり続け、しかもその速度があまり変わらなかった、という動き方です。4位のイタリアとの差は0.10ポイント。直近は2026年第1四半期の+6.46%でした。

第6位 クロアチア:標準偏差2.88

平均+5.55%はこの10か国で2番目に高く、累積+74.4%は33のうち3位です。

5位のスロベニアとの差は0.02ポイントで、10位までで最も小さい段差。この2か国は実質的に同じ水準です。最小は-1.30%で、下げの浅さもスロベニアに近い。直近は2026年第1四半期の+9.96%で、上位10のなかではポルトガルに次いで2番目に高い直近値でした。

第7位 キプロス:標準偏差2.94

平均+1.73%、累積+20.8%(33のうち23位)。最大+7.62%、最小-4.14%で、上下の幅は11.76ポイントです。

6位のクロアチアとの差は0.06ポイント。直近は2026年第1四半期の+6.93%で、10年平均(+1.73%)の4倍の速さに加速しています。累積は中位ですが、直近の動きは上位10のなかで4番目に速い水準です。

第8位 スペイン:標準偏差3.23

平均+3.80%、累積+44.3%(33のうち14位)。最大+10.38%、最小-2.19%。

7位のキプロスとの差は0.29ポイントで、10位までで3番目に大きい段差です。直近は2026年第1四半期の+9.87%で、10年間の最大値(+10.38%)に近いところまで来ています。上位10のなかでは、ポルトガルとクロアチアに次いで3番目に直近が速い国です。

第9位 フランス:標準偏差3.40

平均+0.45%、累積+1.3%(33のうち28位)。10年間で実質価格がほとんど動いていない国です。

最小は-7.35%で、この10か国では2番目に深い下げ。直近は2026年第2四半期の-2.84%で、上位10のなかで唯一マイナスになっています。振れは小さいほうですが、方向は下向きという状態です。

第10位 ポルトガル:標準偏差3.46

平均+8.12%はこの10か国で最も高く、累積+124.6%は33の国・地域のなかで1位。10年で実質価格が2.2倍を超えています。

注目すべきは最小の四半期が+0.65%という点で、33のうちポルトガルだけが全期間を通じて前年同期比がプラスでした。一度も下がらずに上がり続けたため、散らばりが小さく出ています。最大は+16.28%、直近は2026年第1四半期の+15.20%。振れの小ささを「落ち着いている」と読むと誤読になる典型例です。

まとめ

振れが大きい側も見ておきます。標準偏差が最も大きいのはルクセンブルク(7.95、最大+16.03%/最小-17.25%)、次いでハンガリー(7.29)、チェコ(6.94)、ドイツ(6.62)。ドイツは33のうち30位で、最大+9.16%から最小-14.97%まで24.1ポイントの幅で動いています。累積は+12.5%ですが、その途中の振れはヨーロッパで4番目に大きい国でした。

累積の上がり幅で並べ替えると、1位ポルトガル(+124.6%)、2位ハンガリー(+98.5%)、3位クロアチア(+74.4%)、4位リトアニア(+72.4%)。このうち振れの小ささで上位10に入るのはポルトガルとクロアチアだけで、ハンガリーは33位中32位の振れ幅です。上がり方が速い国のなかで、速度が一定だったのはこの2か国という読み方になります。

最後に、この順位は「買いやすさ」や「価格水準」とは無関係です。測っているのは前年同期比のばらつきだけで、価格が高いか安いか、所得と釣り合っているかは含まれていません。期間の取り方を変えれば順位も変わります。2016年からの10年間には、2020年以降の急騰局面と2022年以降の調整局面の両方が入っており、どちらか片方だけを切り出すと別の順位が出ます。

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