東南アジアで住宅価格が上昇している国ランキング

東南アジアで住宅価格が上昇している国ランキング エンタメ

東南アジアの不動産が上がっている、という話はよく聞きます。ただ、どの国がどれだけ上がったのかを数字で比べようとすると、いきなり壁にぶつかります。

国際比較に使える住宅価格指数を集めているのは国際決済銀行(BIS)です。各国の中央銀行や統計局が提出した指数をそのまま公開しているのですが、東南アジアで収録されているのは5か国だけ。シンガポール、マレーシア、タイ、フィリピン、インドネシアです。

ベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ブルネイ、東ティモールは収録がありません。そのため今回は5か国のランキングになります。この点はまとめで詳しく書きます。

順位は2021年第1四半期から2026年第1四半期までの5年間の上昇率(名目)で並べました。

※BISの指数は各国の系列を2010年=100に統一し直したものです。指数の水準そのものは国ごとに設計が違うため比較できませんが、変化率は比較できます。最新期は2026年第1四半期(BISは1四半期遅れで収録)。実質は各国の消費者物価で割り戻した系列です。

順位 国名 5年間の上昇率(名目、2021年第1四半期→2026年第1四半期) 5年間の上昇率(実質) 直近1年の上昇率(名目) 直近1年の上昇率(実質)
1位 フィリピン +45.0% +19.3% +4.5% +1.6%
2位 シンガポール +34.6% +14.6% +3.4% +1.9%
3位 マレーシア +17.0% +5.3% +1.7% +0.1%
4位 タイ +13.5% +4.7% +1.3% +1.9%
5位 インドネシア +7.1% -7.3% +0.6% -3.2%

この表で最初に見てほしいのは、名目と実質で話が変わることです。名目ではフィリピンがシンガポールを10ポイント以上引き離していますが、実質にすると差は4.7ポイントまで縮みます。インドネシアにいたっては、名目では+7.1%と上がっているのに、実質では-7.3%と下がっています。物価上昇に住宅価格が追いついていないということです。

1位 フィリピン:5年で+45.0%

指数は210.9から306.0へ。名目で+45.0%と、5か国で唯一40%を超えました。実質でも+19.3%で1位です。

ただしこの指数には大きな注意点があります。対象が新築住宅のみで、中古住宅を含みません。原資料が銀行の住宅ローン申込データのため四半期ごとの振れも大きく、2025年第2四半期の305.2から第3四半期は293.5へ下がり、第4四半期289.8を経て2026年第1四半期に306.0へ戻っています。単一の四半期だけを取り出して語れない系列です。

2位 シンガポール:5年で+34.6%

指数は122.1から164.3へ、+34.6%。実質では+14.6%です。

この指数は都市再開発庁(URA)の民間住宅価格指数で、HDB(公営住宅)を含みません。シンガポールでは人口の大半が公営住宅に住んでいるため、この数字が国民の住宅事情をそのまま表しているわけではありません。

直近1年は名目+3.4%、実質+1.9%で、実質では5か国でタイと並ぶ最高水準です。URAの発表によると、2026年第2四半期の指数は219.4(2009年第1四半期=100)で、前期比+0.5%でした。

3位 マレーシア:5年で+17.0%

指数は199.2から232.9へ、+17.0%。上位2か国とは大きく差が開きます。

実質では+5.3%にとどまり、直近1年の実質は+0.1%。物価上昇分を引くとほぼ横ばいです。

なお、BISが収録しているマレーシアの系列は中央銀行が提出した平方メートル単価ベースのもので、国内でよく引用されるNAPIC(評価局)のマレーシア住宅価格指数とは別物です。NAPICの2026年第1四半期の速報値は235.9で、BISの232.9とは3ポイントほど違います。

4位 タイ:5年で+13.5%

指数は161.9から183.8へ、+13.5%。名目では5か国中4位です。

ところが直近1年の実質では+1.9%で、シンガポールと並んで最も高い。名目の+1.3%を実質が上回っているのは、タイの消費者物価がこの期間に下がっているためです。5か国で唯一、実質の伸びが名目の伸びを上回った国になります。

この指数はタイ中央銀行が商業銀行などの住宅ローンデータからヘドニック回帰で作っているもので、全国の戸建・タウンハウス・コンドミニアムが対象です。現金で購入された住宅は含まれません。

5位 インドネシア:5年で+7.1%

指数は156.9から168.1へ、名目+7.1%。5か国で最も小さい上昇です。

そして実質は-7.3%。5か国で唯一マイナスで、直近1年の実質も-3.2%です。住宅価格は上がっているのに、物価の上昇にはまったく追いついていないという状態が5年続いています。

この指数はインドネシア中央銀行のもので、18都市の新築住宅(一次市場)のみが対象です。中古市場も、18都市以外の地域も含みません。中銀の発表によると2026年第2四半期の指数は110.89(2018年=100)で、前年同期比+0.69%でした。

まとめ

まず、この記事が5か国しか扱えていない理由です。BISに収録がないだけでなく、ベトナムには継続的に公表されている住宅価格指数そのものが見当たりません。国家統計指標体系には「不動産価格指数」の指標定義が置かれているものの、時系列データの公表は確認できませんでした。ラオスとミャンマーも同様です。

一方、カンボジアとブルネイには公式の指数があります。カンボジアは国立銀行が2020年=100の月次指数を作っており、ブルネイは中央銀行(BDCB)が2015年第1四半期=100の四半期指数を公表しています。ブルネイの2026年第1四半期は99.2で前年比+13.0%と、この記事のどの国より大きく上がっていますが、指数はまだ100を下回っており2015年の水準に戻っていません。四半期の取引件数が150件程度と極端に少なく、5か国と同じ土俵では比べられないため順位には入れていません。

物差しをアジア全体に広げると、フィリピンの位置はさらにはっきりします。同じ5年間でインドは+22.9%、日本は+22.6%(2021年第1四半期→2025年第1四半期)、韓国は+6.4%。そして中国は-20.7%、香港は-20.0%と大きく下げています。直近1年で見ると香港は+7.9%と反転しており、中国は-6.3%と下落が続いています。フィリピンの+45.0%は、BISが収録するアジアのどの国よりも大きい上昇です。

最後に、旧版のこの記事との違いです。旧版は1位ホーチミン市、2位ハノイ、3位バンコク、4位マニラ首都圏と都市単位で順位を付けていましたが、東南アジアの都市別の公式住宅価格指数は、この記事で扱った5か国を含めてほとんど存在しません。ベトナムの2都市については国としての指数すら公表がなく、順位の根拠になる統計がありませんでした。国単位で比較できる指数に置き換えたのがこの記事です。

この記事の数値は、次の統計から集計しています。

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