世界の治安が悪い国ワースト10

世界の治安が悪い国ワースト10 エンタメ

「治安が悪い国」を数字で並べると、ニュースで見かける顔ぶれとはかなり違うランキングになります。

今回の軸は、国連薬物犯罪事務所(UNODC)がまとめている殺人発生率。人口10万人あたり年間何件の殺人が起きたかを示す数字です。犯罪全体の統計は国ごとに定義も集計方法も違って比べにくいのですが、殺人だけは各国の定義が近く、国際比較に使える数少ない指標とされています。数値は世界銀行のデータベースから、各国の最新値を取りました。

あわせて、日本の外務省が出している危険情報のレベルを並べています。統計上の危険度と、日本人が渡航するときの注意度は同じではありません。そのずれが、この記事のいちばんの見どころです。

※殺人発生率はUNODCの集計を世界銀行データベース(2026年7月13日更新)から取得したもので、2019〜2023年のうち各国で最も新しい年の値です。危険情報は外務省海外安全ホームページの2026年9月時点の内容、人口は世界銀行の2024年の値です。

順位 国名 殺人発生率(人口10万人あたりの件数) 殺人発生率の統計の年 外務省の危険情報のうち最も高いレベル(2026年9月時点)
1位 セントクリストファー・ネービス 64.16件 2023年 出ていない
2位 セントビンセント・グレナディーン 51.32件 2023年 出ていない
3位 ジャマイカ 49.44件 2023年 レベル2
4位 エクアドル 45.72件 2023年 レベル3
5位 南アフリカ 43.72件 2022年 レベル2
6位 ハイチ 41.15件 2023年 レベル4(全土)
7位 トリニダード・トバゴ 40.44件 2022年 レベル1(全土)
8位 セントルシア 39.04件 2023年 出ていない
9位 バハマ 32.20件 2022年 出ていない
10位 ホンジュラス 31.44件 2023年 レベル2

タークス・カイコス諸島(76.30件)とプエルトリコ(14.64件)は、この数字なら上位に入ります。ただし前者はイギリスの海外領土、後者はアメリカの自治領で国ではないため、順位からは外しました。

比較のために書いておくと、日本は0.23件。1位のセントクリストファー・ネービスとは約280倍の開きがあります。アメリカは5.76件、フランス1.34件、イギリス1.12件、ドイツ0.91件、韓国0.48件です。

表を横に読むと、殺人発生率の高さと外務省の危険情報がほとんど連動していないことが分かります。上位10か国のうち4か国には、危険情報そのものが出ていません。

1位 セントクリストファー・ネービス:64.16件。危険情報は出ていない

カリブ海の島国で、人口は4万6,843人(2024年)。日本でいえば町ひとつぶんの規模です。2023年の殺人発生率は64.16件で、2019〜2023年に数値のある国・地域のうち、独立国としては最も高い数字になりました。

ただし人口が小さいので、率の裏にある実数は大きくありません。2024年の人口をあてはめて計算すると年間およそ30件。1件増えるだけで率が2件以上動くため、年によって順位が入れ替わりやすい国でもあります。

外務省の危険情報は出ていません。日本からの渡航者が少なく、訪問先がリゾート地に限られることが関係しているのかもしれません。

2位 セントビンセント・グレナディーン:51.32件。ここも危険情報なし

同じくカリブ海の島国で、人口は10万616人。2023年の殺人発生率は51.32件、年間の件数にするとおよそ50件です。

外務省の危険情報は出ていません。上位2か国がどちらも人口10万人前後で、しかも危険情報の対象外。この統計を読むときの注意点が、そのまま出ている形です。

3位 ジャマイカ:49.44件。首都を含む4県がレベル2

人口は283万9,175人、2023年の殺人発生率は49.44件。人口規模があるぶん実数も大きく、年間およそ1,400件という計算になります。

外務省は2026年5月22日付で危険情報を出しており、首都キングストン市を含むセント・アンドリュー県、セント・キャサリン県、セント・ジェームズ県、ウェスト・モアランド県がレベル2(不要不急の渡航は止めてください)。上位10か国のなかで、地域を名指しして渡航自粛を求められているのはここからです。

4位 エクアドル:45.72件。上位10か国で唯一のレベル3

人口1,813万5,478人。2023年の殺人発生率は45.72件で、年間およそ8,300件にあたります。

外務省の危険情報は2024年6月3日付。カルチ県、エスメラルダス県北東部、スクンビオス県などにレベル3(渡航は止めてください)が出ています。上位10か国でレベル3以上が出ているのは、エクアドルとハイチの2か国だけです。

5位 南アフリカ:43.72件。実数では上位10か国で最大

人口6,400万7,187人と、上位10か国では突出して大きい国です。2022年の殺人発生率43.72件を2024年の人口にあてはめると、年間およそ2万8,000件。1位のセントクリストファー・ネービスとは率が2割しか違わないのに、実数では900倍以上の開きがあります。

外務省は2025年4月28日付で、ヨハネスブルグ市、ツワネ市(旧プレトリア市)、ダーバン市のCBD(中心業務地区)とその周辺にレベル2を出しています。国全体ではなく都市の中心部が名指しされているのが、この国の危険情報の特徴です。

6位 ハイチ:41.15件。上位10か国で唯一の退避勧告

人口1,177万2,557人、2023年の殺人発生率は41.15件で、年間およそ4,800件です。

外務省の危険情報は2026年9月14日付で、全土がレベル4(退避してください。渡航は止めてください)。上位10か国でレベル4が出ているのはハイチだけです。外務省は理由として、2021年7月の大統領暗殺事件以降、選挙が行われていない状況を挙げています。

7位 トリニダード・トバゴ:40.44件。全土レベル1

人口136万8,333人、2022年の殺人発生率は40.44件で、年間およそ550件。

外務省は2026年5月25日付で全土にレベル1(十分注意してください)を出し、「凶悪犯罪の発生率が高く、銃器等を使用した殺人や強盗などの犯罪が頻発しています」と説明しています。過去にアジア系住民を狙った殺人や強盗があったことにも触れています。

8位 セントルシア:39.04件。危険情報は出ていない

人口17万9,744人の島国で、2023年の殺人発生率は39.04件。年間およそ70件にあたります。

外務省の危険情報はありません。ここまでの8か国のうち3か国が、統計では世界の上位にいながら、渡航の注意喚起の対象になっていないことになります。

9位 バハマ:32.20件。カリブ海の島国が4つ目

人口40万1,283人、2022年の殺人発生率は32.20件で、年間およそ130件です。

外務省の危険情報は出ていません。上位10か国で危険情報が出ていないのは、セントクリストファー・ネービス、セントビンセント・グレナディーン、セントルシア、そしてバハマ。4か国ともカリブ海の島国です。

10位 ホンジュラス:31.44件。8つの県・市にレベル2

人口1,082万5,703人、2023年の殺人発生率は31.44件、年間およそ3,400件です。

外務省の危険情報は2024年1月15日付。首都テグシガルパ市、コルテス県、アトランティダ県、ジョロ県、オランチョ県、グラシアスアディオス県、コロン県、コマヤグア県にレベル2が出ており、コパン県などはレベル1となっています。

まとめ

この10か国を人口の多い順に並べ替えると、南アフリカ6,401万人、エクアドル1,814万人、ハイチ1,177万人、ホンジュラス1,083万人、ジャマイカ284万人、トリニダード・トバゴ137万人、バハマ40万人、セントルシア18万人、セントビンセント・グレナディーン10万人、セントクリストファー・ネービス4.7万人。殺人発生率の1位と2位が、人口では最下位と下から2番目です。率で並べるか実数で並べるかで、記事の顔ぶれはまったく変わります。

もうひとつはっきりしたのは、殺人発生率と外務省の危険情報が連動していないことです。10か国のうち4か国には危険情報が出ておらず、レベル3以上はエクアドルとハイチの2か国だけ。逆に外務省が全土レベル4としているシリア・アフガニスタン・ソマリアは、この統計では上位に入りません。シリアとソマリアは2019〜2023年の集計に数値がなく、アフガニスタンは4.03件(2021年)でアメリカの5.76件を下回ります。紛争が続く国は統計そのものが取れないため、殺人発生率だけでは危険さが見えないということです。

ベネズエラも同じで、殺人発生率は12.65件(2022年)と上位10か国には届きませんが、外務省は2026年5月22日付で広い範囲にレベル3を出しています。ナイジェリアは15.75件(2023年)で、北東部のボルノ州・ヨベ州などにレベル4が出ています。

日本は0.23件(2023年)。1位の約280分の1、アメリカの25分の1で、世界でも最も低いグループに入ります。

渡航の判断に使うなら、殺人発生率よりも外務省の危険情報のほうが実用的です。国全体ではなく県や市の単位で、いつ出された情報かとセットで示されているからです。

この記事の数値は、次の統計から集計しています。

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