アジアのIT産業がどこで伸びているのか。国ごとの「IT産業の規模」を直接比べる統計はありませんが、近い形で測れるものがあります。ICTサービスの輸出額です。
世界銀行が集計しているこの指標は、通信サービス・コンピュータサービス・情報サービスを国外へ提供した金額(国際収支ベース)。ソフトウェア開発の受託、システム運用、データ処理といった仕事が国境を越えて売れた額が入ります。国内向けの仕事は含まれないため産業全体の規模ではありませんが、その国のIT産業が外から稼げているかどうかを示す数字として使えます。
ここでは2019年から2024年への5年間の伸び率で並べました。対象は、世界銀行の地域区分で「東アジア・太平洋」と「南アジア」に入る国のうちオセアニアを除き、2024年のICTサービス輸出が1億ドル以上の13か国です。
※香港とマカオは中国の特別行政区のため順位に入れていません。ラオス(0.61億ドル・+81.9%)、モンゴル(0.62億ドル・+23.4%)、ブルネイ(0.15億ドル・+1,499.3%)は金額が小さく、順位から外しました。ミャンマーは2019年で数値が止まっています。
| 順位 | 国名 | 2019年から2024年の伸び率 | 2019年のICTサービス輸出額 | 2024年のICTサービス輸出額 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | カンボジア | +260.7% | 0.87億ドル | 3.14億ドル |
| 2位 | インドネシア | +184.7% | 13.21億ドル | 37.60億ドル |
| 3位 | 韓国 | +115.4% | 76.69億ドル | 165.17億ドル |
| 4位 | シンガポール | +109.3% | 148.46億ドル | 310.73億ドル |
| 5位 | 中国 | +96.1% | 349.48億ドル | 685.29億ドル |
| 6位 | インド | +88.3% | 944.05億ドル | 1,777.45億ドル |
| 7位 | 日本 | +57.5% | 74.55億ドル | 117.43億ドル |
| 8位 | マレーシア | +54.3% | 29.96億ドル | 46.24億ドル |
| 9位 | バングラデシュ | +39.8% | 5.12億ドル | 7.15億ドル |
| 10位 | フィリピン | +32.6% | 60.98億ドル | 80.85億ドル |
11位以下は減っています。スリランカ−7.8%(10.54億→9.71億ドル)、タイ−11.5%(5.86億→5.19億ドル)、ネパール−27.8%(1.85億→1.34億ドル)。13か国のうち3か国は、5年前より輸出額が小さくなりました。
13か国の2024年の合計は3,247億ドル。うちインドが1,777億ドルで54.7%、インドと中国の2か国で75.8%を占めます。アジアのICTサービス輸出は、この2か国にかなり寄っています。
1位 カンボジア:+260.7%
2019年の0.87億ドルから2024年の3.14億ドルへ、3.6倍。13か国で最も大きい伸びです。
ただし金額そのものは3.14億ドルで、13か国のなかでは下から2番目。伸び率が大きいのは出発点が小さいからでもあります。増えた金額は2.27億ドルで、これは7位の日本が増やした42.88億ドルの19分の1です。
2位 インドネシア:+184.7%
2019年の13.21億ドルから2024年の37.60億ドルへ、2.8倍です。
人口2億8,349万人(2024年)を抱える東南アジア最大の国が、5年で3倍近くまで輸出を伸ばしました。それでも金額では13か国中8位にとどまります。
3位 韓国:+115.4%
2019年の76.69億ドルから2024年の165.17億ドルへ、2.2倍。
増えた金額は88.48億ドルで、インド・中国・シンガポールに次ぐ4番目の大きさです。もともと規模のある国が2倍以上に伸ばした点で、1位・2位とは性格が違います。
4位 シンガポール:+109.3%
2019年の148.46億ドルから2024年の310.73億ドルへ、162.27億ドルの増加。
金額では13か国で3位。人口が592万人規模の都市国家でありながら、日本(117.43億ドル)の2.6倍のICTサービスを輸出しています。
5位 中国:+96.1%
2019年の349.48億ドルから2024年の685.29億ドルへ、ほぼ2倍。増えた金額335.81億ドルはインドに次ぐ2番目です。
金額では13か国で2位。インド(1,777.45億ドル)とは2.6倍の差があります。
6位 インド:+88.3%。金額はアジアの半分以上
2019年の944.05億ドルから2024年の1,777.45億ドルへ。増えた金額は833.40億ドルで、13か国で最大です。
2024年の1,777.45億ドルは、13か国の合計3,247億ドルの54.7%。アジアのICTサービス輸出の半分以上を1か国で生んでいることになります。伸び率では6位ですが、規模は別格です。
7位 日本:+57.5%
2019年の74.55億ドルから2024年の117.43億ドルへ、42.88億ドルの増加。
金額では13か国中5位。3位の韓国(165.17億ドル)とは47.74億ドルの差があり、2019年には韓国とほぼ並んでいた(74.55億ドル対76.69億ドル)のが、5年で差が開いています。
8位 マレーシア:+54.3%
2019年の29.96億ドルから2024年の46.24億ドルへ。
7位の日本とは3.2ポイント差で、伸び率としてはほぼ同じ。金額では13か国中7位です。
9位 バングラデシュ:+39.8%
2019年の5.12億ドルから2024年の7.15億ドルへ、2.03億ドルの増加です。
金額は13か国中10位。人口1億7,356万人(2024年)に対してこの規模で、1位のカンボジアより金額は大きいものの、伸び率では大きく下回ります。
10位 フィリピン:+32.6%
2019年の60.98億ドルから2024年の80.85億ドルへ、19.87億ドルの増加。金額では13か国中6位です。
伸び率32.6%はプラスの国のなかでは最も小さい数字。すでに規模のあるIT輸出国でありながら、この5年の伸びは限定的だったことになります。
まとめ
物差しを金額に変えると、順位はほぼ逆になります。インド1,777.45億ドル、中国685.29億ドル、シンガポール310.73億ドル、韓国165.17億ドル、日本117.43億ドル、フィリピン80.85億ドル、マレーシア46.24億ドル、インドネシア37.60億ドル、スリランカ9.71億ドル、バングラデシュ7.15億ドル、タイ5.19億ドル、カンボジア3.14億ドル、ネパール1.34億ドル。
伸び率1位のカンボジアは、金額では12位。逆に金額1位のインドは伸び率では6位です。小さい国が倍々で伸びるのと、大きい国が数十億ドル単位で積み増すのとでは、同じ「成長」でも中身がまったく違います。
日本の位置をまとめると、伸び率7位・金額5位。2019年には韓国と並んでいた輸出額が、2024年には47.74億ドル差をつけられています。アジアのなかで日本のICTサービス輸出は、規模でも伸びでも中位にいるというのが数字の答えです。
この記事の数値は、次の統計から集計しています。


コメント