四分位数とは?データの「真ん中」と「散らばり」を読む基本
四分位数とは、データを小さい順に並べたときに、全体を4つのグループに分ける境目の値のことです。平均値だけでは見えにくい「データの偏り」や「ばらつき」を把握するために使われます。
たとえば、営業メンバー10人の月間売上を見たとき、平均売上が高くても、一部のトップ営業だけが大きく数字を引き上げている可能性があります。このような場合、平均値だけを見ると「全体的に好調」と判断してしまいがちです。しかし、四分位数を使えば、売上の低い層・中央の層・高い層がどのあたりに分布しているのかを確認できます。
四分位数には、主に次の3つがあります。
- 第1四分位数(Q1):データを小さい順に並べたとき、下から25%の位置にある値
- 第2四分位数(Q2):データの中央にある値。いわゆる中央値
- 第3四分位数(Q3):データを小さい順に並べたとき、下から75%の位置にある値
ひとことで言うと、第1四分位数は「下位グループの境目」、中央値は「全体の真ん中」、第3四分位数は「上位グループの境目」を表します。
たとえば、ある商品の購入金額データがあったとします。中央値が5,000円、第1四分位数が3,000円、第3四分位数が8,000円だった場合、多くの顧客は3,000円から8,000円の範囲で購入しており、真ん中あたりの購入金額は5,000円だと読み取れます。
ここで重要なのは、四分位数は平均値とは違う視点でデータを見るための指標だということです。平均値はすべての数値を足して件数で割るため、極端に大きい値や小さい値の影響を受けやすい特徴があります。一方、中央値や四分位数はデータの並び順をもとに判断するため、外れ値の影響を受けにくいのがメリットです。
ビジネスの現場では、売上、顧客単価、対応時間、アクセス数、テストスコアなど、さまざまなデータを扱います。そのときに「平均がいくらか」だけでなく、「どの範囲に多くのデータが集まっているのか」「上位と下位でどれくらい差があるのか」を見ることで、より正確な判断がしやすくなります。
Excelを使えば、四分位数は関数で簡単に求められます。まずは四分位数が「データを4分割して、真ん中と散らばりを見るための考え方」だと押さえておきましょう。
Excelで四分位数を求める関数:QUARTILE.INCとQUARTILE.EXCの使い方
Excelで四分位数を求めるときは、主にQUARTILE.INC関数とQUARTILE.EXC関数を使います。どちらも指定したデータ範囲から第1四分位数、中央値、第3四分位数などを計算できる関数です。
基本の書き方は次のとおりです。
=QUARTILE.INC(配列, 戻り値)
=QUARTILE.EXC(配列, 戻り値)
「配列」には、四分位数を求めたいデータ範囲を指定します。たとえば、A2からA21に売上データが入っている場合は、A2:A21のように入力します。
「戻り値」には、どの四分位数を求めるかを数字で指定します。QUARTILE.INC関数では、次のように指定できます。
- 0:最小値
- 1:第1四分位数(Q1)
- 2:中央値(Q2)
- 3:第3四分位数(Q3)
- 4:最大値
たとえば、A2からA21までのデータから第1四分位数を求めたい場合は、次のように入力します。
=QUARTILE.INC(A2:A21,1)
中央値を求めたい場合は、戻り値を「2」にします。
=QUARTILE.INC(A2:A21,2)
第3四分位数を求めたい場合は、戻り値を「3」にします。
=QUARTILE.INC(A2:A21,3)
では、QUARTILE.INCとQUARTILE.EXCは何が違うのでしょうか。大きな違いは、計算するときにデータの端の値を含めるかどうかです。
QUARTILE.INCの「INC」は「inclusive」の略で、最小値や最大値を含めて四分位数を計算します。一方、QUARTILE.EXCの「EXC」は「exclusive」の略で、端の値を除外する考え方で計算します。
実務でまず使いやすいのは、QUARTILE.INC関数です。Excelでも一般的に利用されることが多く、戻り値に0から4まで指定できるため、最小値や最大値も同じ関数で確認できます。迷った場合は、まずQUARTILE.INCを使うとよいでしょう。
ただし、分析ルールが決まっている会社のレポートや、統計手法を厳密にそろえる必要がある資料では、QUARTILE.EXCを指定されるケースもあります。その場合は、前年度の資料や社内テンプレートで使われている関数に合わせるのが安全です。
なお、古いExcelではQUARTILEという関数も使われていました。現在のExcelでは互換性のために残っていますが、これから新しく使うなら、計算方法が明確なQUARTILE.INCまたはQUARTILE.EXCを選ぶのがおすすめです。
四分位数は、関数を覚えてしまえば難しくありません。ポイントは、データ範囲を正しく指定し、求めたい位置に応じて戻り値を変えることです。次の章では、実際の売上データを使って、第1四分位数・中央値・第3四分位数を計算してみましょう。
実践例:売上データから第1四分位数・中央値・第3四分位数を算出する
ここでは、実際にExcelで売上データを使い、第1四分位数・中央値・第3四分位数を求めてみましょう。今回は、営業メンバー10人の月間売上データを例にします。
| セル | 営業担当 | 売上 |
|---|---|---|
| A2:B2 | 佐藤 | 320,000 |
| A3:B3 | 鈴木 | 450,000 |
| A4:B4 | 高橋 | 280,000 |
| A5:B5 | 田中 | 600,000 |
| A6:B6 | 伊藤 | 520,000 |
| A7:B7 | 渡辺 | 390,000 |
| A8:B8 | 山本 | 700,000 |
| A9:B9 | 中村 | 310,000 |
| A10:B10 | 小林 | 480,000 |
| A11:B11 | 加藤 | 900,000 |
この例では、売上金額がB2:B11に入力されているとします。まず、第1四分位数を求めたいセルに次の式を入力します。
=QUARTILE.INC(B2:B11,1)
次に、中央値を求める場合は、戻り値を「2」にします。
=QUARTILE.INC(B2:B11,2)
第3四分位数を求める場合は、戻り値を「3」にします。
=QUARTILE.INC(B2:B11,3)
たとえば、結果が次のようになったとします。
| 指標 | 計算式 | 結果 |
|---|---|---|
| 第1四分位数(Q1) | =QUARTILE.INC(B2:B11,1) |
337,500 |
| 中央値(Q2) | =QUARTILE.INC(B2:B11,2) |
465,000 |
| 第3四分位数(Q3) | =QUARTILE.INC(B2:B11,3) |
580,000 |
この結果から、売上データの下位25%あたりの境目は337,500円、全体の真ん中は465,000円、上位25%に入る境目は580,000円だと読み取れます。
つまり、単純に「平均売上がいくらか」だけを見るよりも、多くのメンバーがどの範囲に集まっているのかが見えやすくなります。今回のデータでは、中央値が465,000円なので、営業メンバーの半数はおおよそ46.5万円以下、もう半数は46.5万円以上の売上だと判断できます。
また、第1四分位数が337,500円、第3四分位数が580,000円なので、中央付近のメンバーの多くはこの範囲に収まっていると考えられます。一方で、900,000円のように大きく高い売上がある場合、平均値はその影響を受けて高くなりやすいです。
実務では、売上データを入力したあとに、別の見やすい場所へ「Q1」「中央値」「Q3」と項目を作り、関数を並べておくと便利です。毎月データを更新するだけで、売上分布の変化をすぐに確認できます。
Excelで四分位数を求める作業自体は、データ範囲を指定して戻り値を変えるだけです。大切なのは、計算結果を見て「下位層・中央層・上位層がどのあたりにいるのか」を読み取ることです。
四分位範囲(IQR)でデータのばらつきや外れ値を見つける方法
四分位数を求めたら、次に確認したいのが四分位範囲(IQR)です。IQRとは「Interquartile Range」の略で、第3四分位数(Q3)から第1四分位数(Q1)を引いた値を指します。
IQR = Q3 - Q1
IQRを見ると、データの中央50%がどれくらいの幅に収まっているのかがわかります。つまり、平均値のように極端な値に引っ張られにくく、実態に近いばらつきを確認しやすいのが特徴です。
前章の売上データでは、第1四分位数が337,500円、第3四分位数が580,000円でした。そのため、IQRは次のように計算できます。
=580000-337500
結果は242,500円です。これは、営業メンバーの中央付近50%の売上が、約24.3万円の幅の中に収まっていることを意味します。IQRが小さければ売上のばらつきは小さく、IQRが大きければメンバー間の差が大きいと判断できます。
Excelで計算する場合は、Q1とQ3をそれぞれセルに出しておくと便利です。たとえば、E2セルにQ1、E4セルにQ3が入っているなら、IQRは次の式で求められます。
=E4-E2
さらにIQRは、外れ値の判定にも使えます。一般的には、次の範囲から外れたデータを外れ値の候補として扱います。
- 下限値:Q1 – 1.5 × IQR
- 上限値:Q3 + 1.5 × IQR
前章の数値で計算すると、下限値と上限値は次のようになります。
下限値 = 337500 - 1.5 * 242500
上限値 = 580000 + 1.5 * 242500
計算結果は、下限値が-26,250円、上限値が943,750円です。つまり、この例では943,750円を超える売上があれば、外れ値の候補として確認したほうがよい、という見方ができます。
今回のデータには900,000円の売上があります。一見するとかなり高い数字に見えますが、IQRを使った基準では上限値943,750円以内に収まっているため、外れ値とは判定されません。ただし、他のメンバーより高いことは確かなので、「なぜ高い売上を出せたのか」を分析する価値はあります。
Excelで外れ値をチェックしたい場合は、各売上データに対して、下限値未満または上限値超えかを判定する列を追加すると便利です。たとえば、売上がB2セル、下限値がE6セル、上限値がE7セルにある場合、次のように入力します。
=IF(OR(B2<$E$6,B2>$E$7),"外れ値候補","通常範囲")
この式を下までコピーすれば、どのデータが外れ値候補なのかを一覧で確認できます。条件付き書式と組み合わせて「外れ値候補」のセルに色を付ければ、レポートでもひと目でわかりやすくなります。
ただし、外れ値は必ずしも「間違ったデータ」ではありません。入力ミスの場合もあれば、特別なキャンペーン、法人契約、大口受注など、ビジネス上重要な理由が隠れていることもあります。IQRはあくまで確認すべきデータを見つけるためのサインとして使いましょう。
ビジネスでの活用例:四分位数を使って数字の傾向を正しく判断するコツ
四分位数は、Excelで計算して終わりではなく、ビジネス判断にどう使うかが大切です。平均値だけでは見えない「現場の実態」をつかむことで、売上分析、顧客分析、業務改善などに役立てられます。
たとえば営業成績を見る場合、平均売上が高くても、一部のトップ営業が数字を押し上げているだけかもしれません。そこで中央値や第1四分位数、第3四分位数を確認すると、チーム全体の実力が見えやすくなります。
- 中央値が上がっている:チーム全体の底上げが進んでいる可能性がある
- 第3四分位数だけが上がっている:上位メンバーだけが伸びている可能性がある
- 第1四分位数が下がっている:下位層へのフォローが必要な可能性がある
このように四分位数を見ると、「売上が伸びた」という結果だけでなく、誰が伸びているのか、どの層に課題があるのかまで考えられます。若手社員が資料を作るときも、「平均は上昇しています」だけでなく、「中央値も上昇しているため、特定メンバーだけでなく全体的に改善傾向です」と説明できると、説得力が増します。
顧客単価の分析にも四分位数は使えます。たとえばECサイトで、購入金額の中央値が5,000円、第3四分位数が8,000円だった場合、多くの顧客は5,000円前後から8,000円程度までの範囲で購入していると考えられます。この情報をもとに、送料無料ラインを7,000円に設定したり、8,000円前後のセット商品を作ったりする施策につなげられます。
また、業務改善の場面では、問い合わせ対応時間や作業時間の分析に便利です。平均対応時間が長い場合でも、四分位数を見ると「大半の対応は短時間で終わっているが、一部の案件だけ極端に長い」とわかることがあります。その場合、全体のスピードを上げるよりも、時間がかかる案件の原因を調べたほうが効果的です。
四分位数を使うときのコツは、必ず比較して見ることです。単月のQ1、中央値、Q3だけを見ても判断しにくいため、前月、前年同月、部署別、商品別などで並べて確認しましょう。
| 比較軸 | 見えること |
|---|---|
| 前月との比較 | 直近で改善・悪化しているか |
| 部署別の比較 | チームごとのばらつきや強み |
| 商品別の比較 | 単価や売れ方の違い |
ただし、四分位数だけで結論を出し切るのは避けましょう。データ件数が少ない場合は数値がぶれやすくなりますし、キャンペーン、季節要因、大口案件などの背景も考える必要があります。四分位数は「答え」ではなく、正しく問いを立てるためのヒントとして使うのがおすすめです。
Excelで四分位数を使えるようになると、数字をただ眺めるだけでなく、「どの層が変化しているのか」「どこに打ち手があるのか」を考えられるようになります。平均値に加えて四分位数を見る習慣をつければ、資料作成や会議での説明も一段レベルアップできます。


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