1章: Excelのチャート機能がもたらす利点
スプレッドシートソフトウェアの代表格である“Excel”は、誰しもが一度は使ったことがあるであろうツールです。しかしその一方で、その多機能さゆえに全ての機能を利用できている訳ではない、という方も多いのではないでしょうか。
中でも本記事で焦点を当てたいのが、Excelの“チャート機能”です。これは数字の羅列だけでは理解しにくいデータを視覚的に解釈する力をもたらしてくれる機能であり、データ分析やレポート作成における重要なツールとなります。
Excelのチャート機能がもたらす最大の利点は、その“可視化能力”です。数字だけを見ても理解が難しいデータでも、形と色で織りなす図形として描かれることで、ひと目でその傾向やパターンを把握することができます。
Excelは、その可視化能力の中にも色々なレベルがありますが、中でも複数の軸やセカンダリ軸といった機能を使うと、より高度なデータ分析が可能となります。
例えば、同じデータでも取り扱う軸の数により、それぞれの軸がデータに与える影響度を可視化することができます。また、セカンダリ軸を使用することで、異なるスケールの2つのデータセットを一つのグラフ内で比較することも可能となります。
しかし、これらの「複数軸」や「セカンダリ軸」の使い方については、意外に知られていない側面があります。これからの章では、これらの利点と、その活用方法について詳しくお伝えします。
2章: グラフの複数軸の見方と利用法
Excelにおける複数軸のグラフとは、一つのグラフ内で複数の軸を使ってデータを表示することを意味します。これらを使うことで、複数のデータ系列を同時に視覚的に比較することが可能になります。
複数軸のグラフは一見複雑に見えるかもしれませんが、理解の鍵はそれぞれの軸が表現するデータを理解することです。それぞれの軸は自分自身が独立した情報を提供しており、それぞれが異なる関連性や影響度を表しています。
たとえば、売上データと広告費のデータを一つのグラフで示すことを考えてみましょう。軸が一つのグラフではこれらのデータを比較することは難しいです。なぜなら、売上データと広告費データはそれぞれ異なる単位で数値化されるからです。しかし、複数の軸を持つグラフを使えば、これらのデータを同時に視覚化でき、その間の関連性を探ることが可能です。

図1: 複数軸グラフの例 – 売上と広告費
しかし複数軸を持つグラフを作成する際は注意が必要です。あまりに多くの軸を追加しすぎると、視覚的な混乱を招き、グラフの理解を難しくしてしまう可能性があります。そのため、必要な軸のみを追加し、可能な限りシンプルに保つことが推奨されます。
Excelでは、複数軸のチャートは「複合グラフ」や「複数軸グラフ」などと呼ばれ、[挿入]>[グラフ]>[複合グラフ]の手順で作成できます。
グラフの複数軸の利用は、データの相関関係や各軸の影響度を可視化することで、データ分析の精度を一段と深めることが可能です。次章では、さらに高度な分析を可能にする「セカンダリ軸」の活用法について詳しく解説します。
3章: セカンダリ軸の意義とその活用ガイド
2章で取り上げた複数軸のチャートは、異なる情報をひとつのグラフで表現する効果的な方法ですが、それでも不十分な場合もあります。それが異なる単位やスケールを持つデータをチャートで表現したい場合です。こういった時に活躍する機能が「セカンダリ軸」です。
セカンダリ軸とは、2つのデータプロットが異なる単位またはスケールを持つ時に、それぞれ個別に分析できるように設ける追加のY軸のことを言います。主軸が基準となる軸である一方、セカンダリ軸は主軸と異なる性質を持つデータを表現します。

図2: セカンダリ軸グラフの例
上の図の例で見れば、左側のY軸(主軸)は一定の間隔で100単位ずつ増加しています。一方、右側のY軸(セカンダリ軸)は主軸とは異なるスケールでデータを表示しています。異なるスケールを持つ2つのデータセットを一つのグラフで表示することが可能になりました。
また、セカンダリ軸は、異なるタイプのチャートを結合して表示することも可能です。例えば、棒グラフと折れ線グラフを組み合わせることで、異なる性質を持つ2つのデータセットを比較できます。
セカンダリ軸のチャートを作成するには、[挿入]>[グラフ]>[複数軸グラフ]の手順でグラフを作成し、[グラフの要素の書式設定]にて「セカンダリ軸を表示する」を選択します。
Excelの「セカンダリ軸」機能は、複数の異なる特性を持つデータセットを一度に比較することを可能にし、より深い洞察を提供します。データ解析の世界において、情報を多面的に捉えることは極めて重要です。早速、あなたのデータをこの強力なツールで分析してみませんか?
4章: 実践!複数軸とセカンダリ軸で作る高度なデータ分析
それでは、これまでに学んだ内容を生かして、実践的な例を見てみましょう。例えば、あるオンラインストアの月次売上と、同期間のWebサイトへの訪問者数(トラフィック)を分析することを考えてみます。
ここでは、複数軸とセカンダリ軸を併用することで、売上額とトラフィックの関係を同一グラフ上で示し、その関連性やトレンドを見てみたいと思います。
Step 1: データの準備
まず、分析する情報、つまり売上とトラフィックのデータを整理し、エクセルの表に入力します。
Step 2: 基本グラフの作成
そして、「挿入」タブの「グラフ」を選択し、まずは基本的な折れ線グラフを作ります。ここでもう一つのデータ系列(この場合はトラフィック)が自動的に追加されます。

図3: 基本的なExcelの折れ線グラフ
Step 3: セカンダリ軸の追加
その後、作成したグラフ上で右クリックし、「データ系列の書式設定」を選択します。そして、「セカンダリ軸」を選択します。これにより、トラフィックのデータ系列が右側のセカンダリ軸に移動します。

図4: セカンダリ軸を追加したグラフ
以上の方法で、一つのグラフ内で2つの異なる単位とスケールを持つデータ系列を持つグラフを作成することができます。
この例では、売上とトラフィックという、異なる単位とスケールを持つ2つのデータ系列を一つのグラフで表示することにより、それぞれのデータの傾向や関連性を視覚的に読み解くことが可能になりました。
Excelの複数軸とセカンダリ軸を用いた強力なデータ分析力を理解していただけたでしょうか?また、複数軸やセカンダリ軸を使ったグラフの作成は、たとえ初めてでも比較的容易に行うことができます。
ぜひ、自分自身で試してみて、データ分析の幅を広げてください。
5章: より効果的なExcelチャート作成のための終わりなき挑戦
これまでの章で、私たちはExcelのチャート機能の一端を学んできました。特に、複数軸とセカンダリ軸という高度な機能を用いたデータ可視化と分析の力を体感していただけたかと思います。
しかし、Excelの持つ可能性は、これだけにとどまりません。さまざまなデータタイプに対応するほかのグラフタイプや、より高度な分析のための関数など、未だに未探索の可能性が広がっています。
このチャプターでは、これからExcelをさらに使いこなすための3つのポイントを提供します。
1. さまざまなグラフタイプを試す
パイチャート、棒グラフ、折れ線グラフ、レーダーチャートなど、Excelは多くのグラフタイプを提供しています。それぞれのグラフは特定の状況やデータタイプに最適化されており、データを異なる視点から捉えるのに役立ちます。慣れ親しんだグラフタイプに固執するのではなく、他のグラフタイプも試してみましょう。
2. 高度な関数を駆使する
VLOOKUPやHLOOKUP、IF、COUNTIFといった関数を学ぶことで、データ分析の精度を劇的に向上させることができます。関数は、データ抽出、数値計算、条件分岐など、多岐にわたる高度な操作を実現します。
3. 継続的な学習と挑戦
Excelのマスターになるには時間と練習が必要です。定期的に新しい機能や関数を学び、それらを現実の問題解決に適用することで、スキルを磨き上げていきましょう。
Excelは、私たちのビジネスライフにおける強力なパートナーであり、効果的に使いこなすことで、業務をよりスムーズに、より深い洞察に裏打ちされたものに変えることができます。
グラフの複数軸やセカンダリ軸の活用は、そのたった一歩目に過ぎません。さあ、データの海をさらに深く、広く探求しましょう。また、その挑戦を共有し、一緒に成長していきましょう。これからも、あなたのITアドベンチャーを心から応援しています。
コメント