Excelで標準偏差を使って売上のばらつきを分析する方法

Excelで標準偏差を使って売上のばらつきを分析する方法 IT

標準偏差とは?売上の「ばらつき」がわかる基本を押さえよう

売上分析をするとき、多くの人がまず見るのは「合計売上」や「平均売上」です。たしかに、今月いくら売れたのか、1日あたり平均いくら売れているのかは重要な指標です。しかし、平均だけを見ていると、売上の実態を見誤ることがあります。

たとえば、A店とB店の1週間の平均売上がどちらも「10万円」だったとします。一見すると、2つの店舗は同じくらいの売上状況に見えますよね。しかし実際には、A店は毎日ほぼ10万円前後で安定している一方、B店はある日は2万円、別の日は20万円というように日によって大きく変動しているかもしれません。

このような「データが平均値からどれくらい散らばっているか」を表す指標が、標準偏差です。

標準偏差を使うと、売上が安定しているのか、それとも日によって大きく変動しているのかを数値で判断できます。標準偏差が小さいほど、売上は平均値の近くに集まっており、安定している状態です。反対に、標準偏差が大きいほど、売上のばらつきが大きく、予測しづらい状態だといえます。

たとえば、毎日の売上平均が10万円で、標準偏差が1万円の場合、多くの日の売上は9万円〜11万円前後に収まりやすいと考えられます。一方で、標準偏差が5万円の場合、売上が5万円の日もあれば15万円の日もあるなど、変動が大きい可能性があります。

ビジネスの現場では、この「ばらつき」を把握することがとても大切です。なぜなら、売上が不安定だと、在庫管理や人員配置、広告予算の判断が難しくなるからです。平均売上だけを見て「順調そうだ」と判断しても、実は特定の日だけ大きく売れていて、普段は売上が低いというケースもあります。

標準偏差を確認すれば、売上の安定度を客観的に把握できます。営業成績、ECサイトの日別売上、店舗別の売上比較など、さまざまな場面で活用できるため、Excelで売上分析をするならぜひ押さえておきたい基本指標です。

難しそうに聞こえるかもしれませんが、Excelを使えば標準偏差は関数で簡単に計算できます。まずは「標準偏差=売上のばらつきを見るための数値」と理解しておけば問題ありません。次章では、Excelで標準偏差を求めるために使う関数と、その使い分けについて解説します。

Excelで標準偏差を求める関数:STDEV.SとSTDEV.Pの違い

Excelで標準偏差を計算するときによく使う関数が、STDEV.SSTDEV.Pです。どちらも売上データのばらつきを求める関数ですが、使う場面が少し異なります。

まず、それぞれの関数の意味を整理しておきましょう。

  • STDEV.S:一部のデータをもとに標準偏差を求める関数
  • STDEV.P:全体のデータをもとに標準偏差を求める関数

ポイントは、分析に使う売上データが「全体」なのか「一部」なのかです。

たとえば、ある店舗の1か月分すべての日別売上を使って、その月の売上のばらつきを見たい場合は、データ全体を対象にしているためSTDEV.Pを使います。

一方で、年間の売上傾向を知りたいけれど、手元には一部の期間だけの売上データしかない場合は、そのデータをサンプルとして扱うためSTDEV.Sを使うのが一般的です。

関数の書き方はどちらもシンプルです。

=STDEV.S(範囲)
=STDEV.P(範囲)

たとえば、B2からB31までに日別売上が入力されている場合、標準偏差は次のように求められます。

=STDEV.S(B2:B31)
=STDEV.P(B2:B31)

では、実務ではどちらを使えばよいのでしょうか。迷った場合は、STDEV.Sを使うケースが多いと覚えておくとよいでしょう。なぜなら、ビジネス分析では、手元のデータをもとに今後の売上傾向を推測したい場面が多いからです。

たとえば、直近30日間の売上データから「今後も売上が安定しそうか」を判断したい場合、30日分のデータはあくまで判断材料の一部です。このようなときは、サンプルデータとして扱うSTDEV.Sが向いています。

反対に、「この30日間の売上のばらつきだけを正確に確認したい」という場合は、対象期間の全データがそろっているためSTDEV.Pを使っても問題ありません。

なお、Excelには古い関数としてSTDEVSTDEVPもあります。現在のExcelでも使える場合がありますが、基本的には新しい表記であるSTDEV.SSTDEV.Pを使うのがおすすめです。関数名から「サンプル」なのか「母集団」なのかがわかりやすく、後からファイルを見返したときにも判断しやすくなります。

売上分析で大切なのは、関数をなんとなく選ぶのではなく、何を知りたいのかに合わせて使い分けることです。次章では、実際の売上データを使いながら、Excelで標準偏差を計算する具体的な手順を見ていきましょう。

売上データを使って標準偏差を計算する具体的な手順

ここからは、実際にExcelで売上データの標準偏差を計算する手順を見ていきましょう。今回は例として、ある店舗の日別売上を使って、売上がどれくらいばらついているのかを確認します。

まず、Excelに次のような表を作成します。

日付 売上
4/1 98000
4/2 105000
4/3 87000
4/4 120000
4/5 110000

実際のExcelでは、A列に日付、B列に売上を入力します。たとえば、A1に「日付」、B1に「売上」と見出しを入れ、A2以降に日付、B2以降に売上金額を入力していくイメージです。

次に、標準偏差を表示したいセルを決めます。たとえば、B列の下にあるB32セルに標準偏差を出したい場合、次のように入力します。

=STDEV.S(B2:B31)

これは、B2からB31までに入力されている売上データをもとに、標準偏差を求める式です。直近30日間の売上データから今後の傾向を考えたい場合などは、前章で説明したとおりSTDEV.Sを使うとよいでしょう。

もし「4月1日から4月30日までの売上データ全体について、ばらつきを確認したい」という目的であれば、次のようにSTDEV.Pを使うこともできます。

=STDEV.P(B2:B31)

関数を入力してEnterキーを押すと、標準偏差の数値が表示されます。たとえば「12500」と表示された場合、売上は平均値からおおよそ1万2500円程度ばらついている、と考えることができます。

ここで注意したいのは、売上データに文字や空白が混ざっていないか確認することです。Excelの標準偏差関数は数値データを対象に計算します。そのため、「未入力」「-」「確認中」などが入っていると、正しく分析できない原因になる場合があります。売上が0円の日は空白にせず、きちんと「0」と入力しましょう。

また、売上金額の表示形式も整えておくと見やすくなります。売上データの範囲を選択し、ホームタブから「数値」や「通貨」を選ぶと、桁区切りや円表示を付けられます。分析結果を上司やチームに共有する場合も、見た目が整っているだけで伝わりやすくなります。

最後に、標準偏差のセルには「標準偏差」などのラベルを付けておきましょう。たとえば、A32に「標準偏差」、B32に関数を入力しておくと、後からファイルを開いたときにも何の数値なのかすぐにわかります。

このように、Excelでは売上データの範囲を指定するだけで、簡単に標準偏差を計算できます。難しい計算式を自分で作る必要はありません。まずは日別売上や店舗別売上など、身近なデータに標準偏差を追加して、売上のばらつきを数値で確認してみましょう。

標準偏差から売上の安定度を読み解くポイント

標準偏差を計算できたら、次に大切なのはその数値をどう読み解くかです。Excelで標準偏差を出しても、「12500」と表示されただけでは、それが良い状態なのか悪い状態なのか判断しにくいですよね。

まず押さえておきたいのは、標準偏差は平均売上とセットで見るということです。標準偏差の数値だけを見ても、売上の安定度は正しく判断できません。

たとえば、平均売上が10万円で標準偏差が1万円なら、売上は比較的安定していると考えられます。多くの日で、売上が9万円〜11万円前後に収まりやすいからです。一方、平均売上が10万円で標準偏差が5万円なら、日によって売上が大きく上下している可能性があります。

つまり、同じ「標準偏差1万円」でも、平均売上が100万円の店舗なら小さなばらつきですが、平均売上が2万円の店舗ならかなり大きなばらつきです。標準偏差は、必ず売上規模とあわせて確認しましょう。

実務で使いやすい見方として、次のように判断するとわかりやすくなります。

  • 標準偏差が小さい:売上が安定しており、予測しやすい
  • 標準偏差が大きい:売上の変動が大きく、要因分析が必要
  • 急に標準偏差が大きくなった:キャンペーン、天候、曜日、トラブルなどの影響を確認する

標準偏差が小さい場合は、日々の売上が安定しているため、在庫数やシフト人数を計画しやすくなります。営業や店舗運営においては、売上予測が立てやすい状態といえるでしょう。

反対に、標準偏差が大きい場合は、売上が大きく伸びる日もあれば、落ち込む日もあるということです。この場合、「なぜ売上が高い日と低い日があるのか」を深掘りする必要があります。曜日による差、広告配信の有無、給料日前後、セール期間、天候など、売上に影響していそうな要因を確認してみましょう。

また、極端に売上が高い日や低い日があると、標準偏差は大きくなります。たとえば、月に1日だけ大型キャンペーンで売上が急増した場合、その日が全体のばらつきを押し上げているかもしれません。このようなデータは外れ値として扱い、通常営業日とは分けて分析するのも有効です。

標準偏差を見ることで、「売上が平均的に高いか」だけでなく、安定して稼げているかまで判断できます。売上が高くてもばらつきが大きい場合は、再現性のある施策になっていない可能性があります。逆に、売上が安定しているなら、次は平均売上をどう引き上げるかを考える段階です。

このように標準偏差は、売上の安定度を数値で把握するための便利な指標です。単に計算して終わりではなく、平均売上や売上が大きく変動した日と照らし合わせながら、次の改善アクションにつなげていきましょう。

グラフや平均値と組み合わせて売上分析をわかりやすくする方法

標準偏差は数値だけでも売上のばらつきを把握できますが、グラフや平均値と組み合わせることで、さらに直感的に分析しやすくなります。特に、上司やチームメンバーに売上状況を共有するときは、数字を並べるだけでなく、視覚的に見せる工夫が重要です。

まずおすすめなのが、日別売上を折れ線グラフにする方法です。Excelで日付と売上の範囲を選択し、「挿入」タブから折れ線グラフを選ぶと、売上の上下がひと目でわかります。標準偏差の数値だけでは見えにくい「どの日に大きく売上が伸びたのか」「どのタイミングで落ち込んだのか」を確認できます。

次に、平均売上の線をグラフに追加すると、分析がさらにわかりやすくなります。たとえば、C列に「平均売上」という列を作り、C2からC31まで同じ平均値を入力します。平均値は次の関数で求められます。

=AVERAGE(B2:B31)

そのうえで、日別売上と平均売上を同じ折れ線グラフに表示すると、各日の売上が平均より上なのか下なのかを視覚的に判断できます。売上が平均線を大きく上回っている日があれば、その日に実施したキャンペーンや広告、曜日などを確認しましょう。逆に、平均を大きく下回る日が続いている場合は、集客や在庫、スタッフ体制に課題があるかもしれません。

さらに一歩進めるなら、平均値+標準偏差平均値−標準偏差のラインも追加してみましょう。たとえば、平均売上が100,000円、標準偏差が12,000円なら、112,000円と88,000円のラインを作ります。この範囲内に売上が収まっている日が多ければ、比較的通常の変動範囲内と考えられます。

  • 平均値の線:通常の売上水準を確認する
  • 平均値+標準偏差の線:好調日の目安として見る
  • 平均値−標準偏差の線:注意が必要な日の目安として見る

この3本のラインを入れることで、「なんとなく売上が高い・低い」ではなく、基準を持って判断できます。たとえば、平均値−標準偏差を下回る日が多い週は、売上が弱い状態が続いているサインです。一方で、平均値+標準偏差を上回る日が何度もある場合は、好調要因を分析して再現できる施策に落とし込むチャンスです。

また、店舗別や担当者別の売上を比較する場合は、棒グラフも有効です。各店舗の平均売上を棒グラフで表示し、標準偏差を別表で並べると、「売上は高いがばらつきも大きい店舗」「売上はそこそこだが安定している店舗」といった違いが見えてきます。安定性まで含めて評価したいときに役立ちます。

Excelでは、条件付き書式を使って平均より大きく下回った売上に色を付けるのもおすすめです。たとえば、平均値−標準偏差を下回るセルを赤く表示すれば、注意すべき日がすぐにわかります。毎日の売上チェック表として使う場合にも便利です。

標準偏差は、単体で見るよりも、平均値やグラフと組み合わせることで実務に活かしやすくなります。売上のばらつきを「見える化」できれば、問題のある日を発見しやすくなり、改善アクションにもつなげやすくなります。Excelで売上分析を行う際は、計算して終わりではなく、ぜひグラフ化までセットで行ってみてください。

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