OECDが公表する2025年の平均年間賃金(購買力平価の米ドル建て)と、国連のSDSNが発行するWorld Happiness Report 2026の生活評価スコアを並べると、両者の順位はきれいには一致しません。
OECD加盟34か国について、年収の順位と生活満足度の順位のずれを計算しました。ずれが大きい順、つまり「年収の割に満足度が低い」順に並べます。
※本記事の年収は、OECD「Average annual wages」2025年(購買力平価の米ドル、2025年価格)。生活満足度は、World Happiness Report 2026 の Figure 2.1 データ(2023〜2025年の3年平均、147の国・地域が対象)。順位のずれは本記事で計算した数値です。
順位の決め方と、対象の範囲
対象は、OECDの平均年間賃金とWorld Happiness Reportの生活評価スコアの両方がそろう34か国。この34か国のなかで、それぞれ年収の高い順・満足度の高い順に順位を付け、「満足度の順位 − 年収の順位」を計算しました。この値がプラスなら、年収の順位より満足度の順位が下にあるということです。
生活評価スコアは「最も良い生活を10、最も悪い生活を0としたとき、いまの自分の生活は何点か」を尋ねたギャラップ世界世論調査の回答の平均で、3年分を平均しています。ずれが同じ場合は、年収の順位が高いほうを上位としました。34か国のOECD平均賃金は6万4,809ドルです。
| 順位 | 国 | 順位のずれ | 平均年収(34か国の順位) | 生活評価スコア(34か国の順位) | 147の国・地域での満足度順位 |
| 1 | アメリカ | +15 | 86,977ドル(4位) | 6.816(19位) | 23位 |
| 2 | 韓国 | +13 | 61,259ドル(18位) | 6.040(31位) | 67位 |
| 3 | オーストリア | +10 | 78,301ドル(7位) | 6.845(17位) | 19位 |
| 4 | イギリス | +9 | 66,299ドル(14位) | 6.694(23位) | 29位 |
| 5 | カナダ | +8 | 67,901ドル(13位) | 6.741(21位) | 25位 |
| 6 | ベルギー | +7 | 80,009ドル(6位) | 6.926(13位) | 14位 |
| 7 | ルクセンブルク | +6 | 98,530ドル(2位) | 7.063(8位) | 9位 |
| 8 | スイス | +6 | 92,285ドル(3位) | 7.018(9位) | 10位 |
| 9 | ドイツ | +6 | 76,285ドル(9位) | 6.882(15位) | 17位 |
| 10 | 日本 | +5 | 50,183ドル(25位) | 6.130(30位) | 61位 |
上位10のうち8か国は年収が34か国の上位半分に入ります。ずれが大きいのは「年収が高い国」であることが多い、というのがまず読み取れる傾向です。
第1位 アメリカ:ずれ+15
平均年収8万6,977ドルは34か国で4位、OECD平均(6万4,809ドル)の1.34倍です。いっぽう生活評価スコア6.816は34か国で19位、147の国・地域のなかでは23位。
ずれ+15は34か国で最も大きく、2位の韓国(+13)を2上回ります。年収で上位5位に入る5か国(アイスランド・ルクセンブルク・スイス・アメリカ・オランダ)のうち、満足度が10位以下に落ちるのはアメリカだけになります。
第2位 韓国:ずれ+13
平均年収6万1,259ドルは34か国の18位で、OECD平均を5.5%下回ります。生活評価スコア6.040は34か国で31位、147の国・地域では67位です。
147の国・地域での順位で見ると、韓国の67位は上位10のなかで最も低い水準です(2番目に低いのは日本の61位)。年収は中位でも、満足度は世界の真ん中あたりという位置づけになります。
第3位 オーストリア:ずれ+10
平均年収7万8,301ドルは34か国の7位で、OECD平均の1.21倍。生活評価スコア6.845は17位です。
ドイツ語圏の3か国(オーストリア・スイス・ドイツ)がそろって上位10に入っており、ずれはそれぞれ+10、+6、+6。3か国とも年収は上位9位以内で、満足度は9位から17位に落ちます。
第4位 イギリス:ずれ+9
平均年収6万6,299ドルは34か国の14位で、OECD平均をわずかに上回る水準。生活評価スコア6.694は23位、147の国・地域では29位です。
英語圏で比べると、アメリカ(+15)、イギリス(+9)、カナダ(+8)、オーストラリア(+3)、アイルランド(0)、ニュージーランド(-9)と並びます。英語圏6か国のうち4か国がプラス、アイルランドがゼロで、ニュージーランドだけが逆向きです。
第5位 カナダ:ずれ+8
平均年収6万7,901ドルは34か国の13位、生活評価スコア6.741は21位。年収ではイギリスの1つ上、満足度でもイギリスの2つ上に位置します。
147の国・地域での満足度順位は25位で、アメリカ(23位)とほぼ並びます。年収はアメリカより1万9,076ドル低く、満足度はほぼ同じ、という関係です。
第6位 ベルギー:ずれ+7
平均年収80,009ドルは34か国の6位で、OECD平均の1.23倍。生活評価スコア6.926は13位です。
年収で上位6位以内に入る6か国は、いずれもずれがプラスです。ただし大きいのはアメリカ(+15)、ベルギー(+7)、ルクセンブルク(+6)、スイス(+6)の4か国で、アイスランドとオランダは+1にとどまります。
第7位 ルクセンブルク:ずれ+6
平均年収9万8,530ドルは34か国で2位。1位のアイスランド(10万605ドル)との差は2,075ドルです。生活評価スコア7.063は8位。
7位から9位はずれがいずれも+6で並びます。本記事のルールにしたがい、年収の順位が高い順にルクセンブルク(2位)、スイス(3位)、ドイツ(9位)の順としました。
第8位 スイス:ずれ+6
平均年収9万2,285ドルは34か国の3位、OECD平均の1.42倍です。生活評価スコア7.018は9位で、7点台に乗っている9か国の最後にあたります。
年収が9万ドルを超えるのはアイスランド・ルクセンブルク・スイスの3か国だけで、この3か国の満足度順位は2位・8位・9位。アイスランドだけがずれ+1にとどまり、ルクセンブルクとスイスは+6です。
第9位 ドイツ:ずれ+6
平均年収7万6,285ドルは34か国の9位、生活評価スコア6.882は15位です。147の国・地域では17位。
上位10のなかで、年収がOECD平均を上回りながら満足度が15位以下に落ちるのは、アメリカ(19位)、オーストリア(17位)、イギリス(23位)、カナダ(21位)、ドイツ(15位)の5か国です。
第10位 日本:ずれ+5
平均年収5万183ドルは34か国で25位、OECD平均を22.6%下回ります。上位10のなかでは最も低い年収です。生活評価スコア6.130は34か国で30位、147の国・地域では61位。
日本と同じずれ+5のポルトガル(年収27位・満足度32位)とは、年収の順位が高い日本を上位としました。年収も満足度も下位という組み合わせなので、「年収が高いのに満足度が低い」というより「年収の低さ以上に満足度が低い」という読み方が正確です。11位はそのポルトガル、12位はフランス(+4)でした。
まとめ
反対側、つまり年収の順位より満足度の順位が上の国も見ておきます。1位はメキシコ(ずれ-23、年収34位=最下位の2万4,463ドル、満足度11位)、次いでイスラエル(-16)、フィンランド(-15)、スウェーデン(-13)、チェコ(-11)、ニュージーランド(-9)。フィンランドの生活評価スコア7.764は147の国・地域で1位ですが、年収は34か国の16位です。
ずれがゼロ、つまり年収の順位と満足度の順位が一致したのはアイルランド(12位・12位)とラトビア(28位・28位)の2か国だけでした。34か国のうちプラスが21、マイナスが11、ゼロが2という内訳です。
最後に、この順位が何を測っていないかを確認しておきます。順位のずれは差の大きさを反映しません。たとえばルクセンブルクとスイスはどちらもずれ+6ですが、年収も満足度も絶対値では上位にあります。また生活評価スコアは自己申告で、点の付け方には文化差があることがWorld Happiness Report自身でも指摘されています。年収はOECDの基準で揃えた平均賃金で、中央値でも手取りでもありません。3つとも、この表の数字を読むときの前提になります。


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