アジアで住宅価格が所得の伸びを上回った国ランキング

アジアで住宅価格が所得の伸びを上回った国ランキング エンタメ

「住宅が上がって暮らしが苦しい」という話は、価格の上がり方だけでは確かめられません。所得がそれ以上に増えていれば、負担は重くなっていないからです。比べるべきは、価格の伸びと所得の伸びの差です。

使うのは、BIS(国際決済銀行)の住宅価格指数(名目)と、世界銀行の1人あたり名目GDP(自国通貨建て)です。2015年から2024年までの10年間で、それぞれが何倍になったかを出し、住宅価格の倍率を所得の倍率で割りました。この値がプラスなら、住宅価格が所得より速く上がったことになります。

※対象は、BISがアジアで住宅価格指数を公表している12の国・地域です。BISの指数は四半期ごとに出るため、2015年と2024年それぞれ4四半期の平均を使いました。1人あたり名目GDPは手取りの可処分所得そのものではなく、その国で1年間に生み出された付加価値を人口で割った値です。台湾とベトナムはBISが住宅価格指数を公表していないため、対象に入っていません。表の「実質住宅価格指数の伸び」は、BISが消費者物価で割り戻して公表している指数の変化で、所得ではなく物価との比較です。

順位 国・地域 住宅価格指数の伸び 1人あたり名目GDPの伸び 所得に対する住宅価格の変化 実質住宅価格指数の伸び
1位 イスラエル +60.2% +42.8% +12.2% +39.7%
2位 日本 +32.1% +18.5% +11.5% +19.8%
3位 フィリピン +79.8% +72.4% +4.3% +30.0%
4位 トルコ +1,621.4% +1,632.4% -0.6% +90.6%
5位 タイ +31.0% +33.8% -2.1% +17.9%
6位 マレーシア +38.2% +44.2% -4.2% +17.4%
7位 韓国 +26.0% +44.8% -13.0% +4.7%
8位 シンガポール +43.7% +65.8% -13.3% +22.2%
9位 香港 +0.6% +28.8% -21.9% -14.7%
10位 インド +53.0% +111.4% -27.6% -1.4%
11位 インドネシア +19.9% +77.4% -32.4% -8.5%
12位 中国 +17.3% +87.9% -37.6% +1.8%

住宅価格が所得の伸びを上回ったのは、12のうち3つだけでした。イスラエル、日本、フィリピンです。残る9つは、住宅価格より所得のほうが速く増えています。

1位 イスラエル:+12.2%

住宅価格指数は140.1から224.5へ、10年で60.2%上がりました。同じ10年で1人あたり名目GDPは14万0,463シェケルから20万0,586シェケルへ42.8%の増加。差し引き12.2%だけ、住宅価格のほうが速く上がったことになります。

物価で割り戻した実質住宅価格指数も+39.7%で、これは12の国・地域のなかでトルコに次ぐ2番目の伸びでした。

2位 日本:+11.5%

住宅価格指数は104.9から138.6へ32.1%の上昇。この伸び自体は12のなかで7番目で、特に大きいわけではありません。

順位が2位になるのは、1人あたり名目GDPの伸び18.5%が12のなかで最も小さいからです。金額では約432万円から約512万円。住宅が突出して上がったというより、所得が動かなかった結果としてこの位置に来ています。実質住宅価格指数は+19.8%でした。

なお2025年の住宅価格指数は年平均144.7で、2024年平均からさらに4.4%上がっています。

3位 フィリピン:+4.3%

住宅価格指数は157.0から282.3へ79.8%の上昇。トルコを除けば12のなかで最も大きい伸びです。

ところが1人あたり名目GDPも13万2,407ペソから22万8,320ペソへ72.4%増えているため、差は4.3%にとどまります。実質住宅価格指数は+30.0%でした。

4位 トルコ:-0.6%

住宅価格指数は175.1から3,014.1へ、10年で1,621.4%上がりました。1人あたり名目GDPも30,096リラから521,374リラへ1,632.4%の増加。どちらも17倍前後に膨らみ、差はほとんどありません。

実質住宅価格指数の+90.6%は12のなかで最大です。物価と比べれば住宅は大きく上がったものの、所得の伸びとはほぼ同じ速さでした。2025年の指数は3,971.9で、2024年平均からさらに31.8%上がっています。

5位 タイ:-2.1%

住宅価格指数は136.0から178.1へ31.0%、1人あたり名目GDPは194,830バーツから260,701バーツへ33.8%。差は2.1%です。

実質住宅価格指数は+17.9%。住宅価格の伸びと所得の伸びが、10年を通してほぼ並走した例です。

6位 マレーシア:-4.2%

住宅価格指数は162.9から225.1へ38.2%、1人あたり名目GDPは37,683リンギから54,342リンギへ44.2%増えました。

実質住宅価格指数は+17.4%で、タイとほぼ同じ水準です。この2か国は、住宅価格・所得・物価の関係がよく似た形になっています。

7位 韓国:-13.0%

住宅価格指数は113.1から142.5へ26.0%。1人あたり名目GDPは約3,412万ウォンから約4,941万ウォンへ44.8%増えており、所得の伸びのほうが大きく上回りました。

実質住宅価格指数の+4.7%は、中国の+1.8%に次いで小さい伸びです。10年でならすと、韓国の住宅価格は物価とほぼ同じペースでした。

8位 シンガポール:-13.3%

住宅価格指数は107.9から155.1へ43.7%の上昇。実質住宅価格指数も+22.2%で、12のなかで4番目に大きい伸びです。

それでも順位が8位になるのは、1人あたり名目GDPが76,503シンガポールドルから126,804シンガポールドルへ65.8%増えたためです。物価と比べれば大きく上がったのに、所得と比べると13.3%下がる、という組み合わせになっています。

9位 香港:-21.9%

住宅価格指数は196.7から197.9へ、10年で0.6%しか動きませんでした。12のなかで最も小さい伸びです。

一方で1人あたり名目GDPは32万8,924香港ドルから42万3,551香港ドルへ28.8%増えています。実質住宅価格指数は-14.7%で、12のなかで最も大きな下げ幅でした。2025年の指数は192.2と、2024年平均からさらに2.9%下がっています。

10位 インド:-27.6%

住宅価格指数は226.8から347.0へ53.0%上がりました。これは12のなかで4番目に大きい伸びです。

それでも10位になるのは、1人あたり名目GDPが103,702ルピーから219,219ルピーへ111.4%、つまり2倍以上に増えたためです。この伸びはトルコを除けば12のなかで最大でした。実質住宅価格指数は-1.4%です。

まとめ

11位はインドネシアで-32.4%。住宅価格指数が138.5から166.0へ19.9%上がるあいだに、1人あたり名目GDPは約4,403万ルピアから約7,810万ルピアへ77.4%増えました。実質住宅価格指数は-8.5%です。

12位は中国の-37.6%。住宅価格指数108.1→126.8(+17.3%)に対し、1人あたり名目GDPは50,912元から95,677元へ87.9%増えています。中国の実質住宅価格指数は+1.8%で、10年でならせば物価とほぼ同じでした。

2025年の動きを見ると、12の国・地域のうち住宅価格指数が2024年平均より下がったのは、中国(-6.3%)と香港(-2.9%)の2つだけです。残る10は上がっており、伸び幅が最も大きいのはトルコの+31.8%、次いでフィリピンの+4.6%、日本の+4.4%でした。

物価との比較(実質住宅価格指数)では、10年で下がったのは香港・インドネシア・インドの3つだけで、残る9つは上がっています。物価と比べれば多くの国で住宅は上がったのに、所得と比べると下がった国のほうが多い——この2つの見え方の違いが、この記事の数字がいちばん示しているところです。

最後に、旧版のこの記事との違いを書いておきます。旧版の順位は1位香港、2位シンガポール、3位韓国、4位台湾、5位日本、6位マレーシア、7位タイ、8位フィリピン、9位インドネシア、10位ベトナムでした。

この指標では香港9位、シンガポール8位、韓国7位、日本2位、マレーシア6位、タイ5位、フィリピン3位、インドネシア11位。台湾とベトナムは、BISが住宅価格指数を公表していないため比較できません。旧版が1位に置いた香港は、実際には住宅価格がほとんど動かず、所得の伸びに置いていかれた側でした。旧版が触れていなかったイスラエル・トルコ・インド・中国のうち、イスラエルがこの指標では1位です。

この記事の数値は、次の統計から集計しています。

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