人口が減っている国はどこか。これを印象で語ると、どうしても「日本が世界一」という話になりがちです。ところが数字で並べると、まったく違う顔ぶれが上位に出てきます。
今回使うのは、世界銀行の世界開発指標(World Development Indicators)。人口のデータは国連の世界人口推計(World Population Prospects)をもとにしており、2026年7月13日に更新された数値が最新です。
順位は、次の2段階で決めました。
- 2025年の人口が100万人以上の国に絞る(人口の少ない国は数千人の増減で率が大きく動くため)
- そのうえで、2015年から2025年までの10年間の人口変化率が小さい順に10位まで並べる
対象となった160か国のうち、この10年で人口が減ったのは25か国。2020年から2025年の5年間で見ると27か国です。世界全体では人口が増え続けている一方、減少に転じた国は一部に集中しています。
※以下、断りのない数値はすべて世界銀行の世界開発指標によるもので、人口は各年の年央推計です。
| 順位 | 国 | 2015年から2025年の人口変化率 | 2020年から2025年の人口変化率 | 2025年の人口 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | モルドバ | -16.76% | -10.42% | 236万人 |
| 2位 | ウクライナ | -14.86% | -12.76% | 3,898万人 |
| 3位 | アルバニア | -13.98% | -7.08% | 235万人 |
| 4位 | コソボ | -11.82% | -11.91% | 158万人 |
| 5位 | ボスニア・ヘルツェゴビナ | -10.76% | -4.83% | 314万人 |
| 6位 | レバノン | -9.63% | +2.58% | 585万人 |
| 7位 | ブルガリア | -7.89% | -1.79% | 643万人 |
| 8位 | セルビア | -7.70% | -5.07% | 655万人 |
| 9位 | ベネズエラ | -6.73% | +0.26% | 2,852万人 |
| 10位 | クロアチア | -6.64% | -0.97% | 388万人 |
1つだけ、条件から外したものがあります。プエルトリコは10年で9.91%減と、実数だけなら6位に入る水準です。ただし米国の自治領であって独立した国ではないため、今回の10か国からは除きました。
そして日本は、この基準では18位。10年間の変化率は-2.97%で、上位10か国とは桁が違います。ただ、後で触れるように、実数と高齢化率という別の物差しを当てると日本の位置はまったく変わります。
もうひとつ、読み進めるうえで押さえておきたい区別があります。人口が減る理由は大きく2つで、死亡が出生を上回る「自然減」と、出ていく人が入ってくる人を上回る「社会減」です。上位10か国は、この2つのどちらが効いているかで性格がはっきり分かれます。
1位 モルドバ:10年で16.8%減。減少の中心は国外への流出
モルドバの人口は2015年の284万人から2025年に236万人へ、10年で16.76%減りました。人口100万人以上の国では最も大きな減少率です。
特徴は、減り方の内訳にあります。2024年の出生率は人口1,000人あたり10.6人、死亡率は13.8人ですから、自然減は1,000人あたり3.2人。これに対して2025年の純移動は-2万9766人で、人口236万人の1.26%が1年で国外へ出た計算になります。自然減より流出のほうがはるかに大きい、という構図です。
合計特殊出生率は1.73と、ヨーロッパのなかでは低いほうではありません。65歳以上の割合も16.9%で、高齢化が進みすぎているわけでもない。それでも人口が6分の1近く減ったのは、出ていく人の多さがすべてを上回っているからです。
直近5年でも10.42%減と、減少のペースは落ちていません。
もう少し長い目盛りで見ると、モルドバの人口減少は最近始まったものではありません。2000年の292万人と比べれば、25年間で19.3%減っています。平均寿命は71.3歳で、上位10か国のなかで最も短い数字です。
一人当たり国民総所得(GNI)は8050ドル。15歳未満の割合は19.5%と若い層はまだ残っていますが、その世代が成人したときに国内に残るかどうかで、今後の減り方は変わってくるかもしれません。
人口がいつ最も多かったかを見ると、モルドバのピークは1991年の298万人(1990年以降の集計で)。そこから2025年までに20.8%減った計算になります。減少はソ連解体の時期から30年以上続いてきたもので、この10年に始まった話ではありません。
2位 ウクライナ:10年で680万人減。実数では世界最大
ウクライナの人口は2015年の4,578万人から2025年に3,898万人へ。減少率は14.86%、減った人数は680万人で、これは世界のどの国よりも大きい数字です。しかも減少の大半は直近5年に集中しており、2020年からの5年だけで570万人が減っています。
出生率の低さは際立っています。2024年の合計特殊出生率は0.99。人口1,000人あたりの出生が5.5人、死亡が13.6人ですから、自然減は1,000人あたり8.1人にのぼります。
一方で、2025年の純移動はプラス170万2358人です。10年で680万人減った国が、直近の1年では流入超過に転じている。国外に出た人の一部が戻ってきていることが数字に表れているのかもしれませんが、この統計だけでは移動の中身までは分かりません。
2000年と比べると、人口は4,956万人から21.3%減った計算になります。減少そのものは2022年より前から続いており、直近5年の落ち込みがそこに重なった形です。
一人当たりGNIは5510ドル、平均寿命は74.7歳、15歳未満の割合は13.7%。合計特殊出生率0.99という数字と合わせると、当面は自然減が続きやすい構造にあります。
ウクライナのピークは1993年の5,235万人で、そこから25.5%減りました。人数にすると1,337万人。上位10か国のなかで、減った人数は群を抜いています。
3位 アルバニア:出生が死亡を上回るのに、10年で14.0%減
アルバニアの人口は273万人から235万人へ、10年で13.98%減りました。
この国の数字は、人口減少を「少子高齢化」で説明できないことをはっきり示しています。2024年の出生率は1,000人あたり10.1人、死亡率は8.5人。つまり自然増です。それでも人口が減っているのは、2025年の純移動が-2万4230人と、人口235万人の1.03%にあたる規模で流出しているためです。
合計特殊出生率は1.34と低く、65歳以上は17.6%。将来的には自然減に転じる可能性がありますが、少なくとも現時点で人口を押し下げているのは流出のほうです。
ただし減り方のペースは変わってきています。10年で14.0%減に対し、直近5年は7.08%減。前半5年のほうが減少が大きかった計算になります。
2000年の309万人と比べると、25年間で23.9%の減少です。上位10か国のなかではボスニア・ヘルツェゴビナに次ぐ大きさで、流出が長期にわたって続いてきたことが分かります。
一人当たりGNIは1万2060ドル、平均寿命は79.8歳。この平均寿命は上位10か国で最も長い数字です。
アルバニアのピークは集計の始まる1990年の328万人で、そこから28.5%減っています。ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボと並び、35年で3割近く減った国のひとつです。
4位 コソボ:自然増が続くなかでの人口減少
コソボの人口は179万人から158万人へ、10年で11.82%減りました。直近5年に限れば11.91%減で、10年の数字とほぼ同じ。つまり減少は2020年以降に集中しています。
アルバニアと同じ型ですが、自然増の大きさはこちらが上です。2024年の出生率は1,000人あたり11.9人、死亡率は6.0人。差し引き1,000人あたり5.9人の自然増があります。65歳以上の割合も10.5%と、上位10か国のなかで最も若い部類です。
それでも人口が1割以上減った理由は、純移動-1万8380人という流出の規模にあります。人口158万人に対して1.17%。若い国から、毎年1%以上が出ていく状態が続いています。
2000年の180万人と比べると25年間で12.5%の減少で、上位10か国のなかでは長期の減り方はむしろ小さいほうです。減少が本格化したのは、ここ5年ということになります。
一人当たりGNIは7760ドルと、上位10か国ではウクライナに次いで低い水準。それでいて15歳未満の割合は20.0%で10か国中最も高く、平均寿命も78.2歳と長い。人口の構造だけを見れば増えてもおかしくない国が、流出だけで減っています。
コソボのピークは1997年の220万人。そこから28.2%減りました。上位10か国のなかではピークが最も遅く、減少の歴史は比較的新しいことになります。
5位 ボスニア・ヘルツェゴビナ:自然減と流出が同時に進む
ボスニア・ヘルツェゴビナの人口は352万人から314万人へ、10年で10.76%の減少です。
ここまでの3か国と違い、この国では自然減と流出が両方効いています。2024年の出生率は1,000人あたり7.7人に対し死亡率は13.5人で、自然減は1,000人あたり5.8人。純移動も-6994人のマイナスです。
65歳以上の割合は22.9%と、上位10か国のなかでは高い水準にあります。合計特殊出生率は1.49。出生が細り、高齢化が進み、そのうえで人が出ていく——3つが重なっている国です。
ただし直近5年の減少は4.83%で、10年の10.76%に比べればペースは緩んでいます。
2000年の416万人と比べると、25年間で24.5%の減少。これは上位10か国で最も大きな長期の減少幅です。
15歳未満の割合は12.8%で、上位10か国のなかで最も低い数字。一人当たりGNIは9940ドル、平均寿命は78.0歳です。子どもの世代がすでに薄いため、出生数がこれ以上大きく増えにくい構造になっています。
ボスニア・ヘルツェゴビナのピークは1991年の446万人で、そこからの減少率は29.6%。上位10か国のなかで最も大きな数字です。35年かけて人口の3割が失われた計算になります。
6位 レバノン:減少は2020年まで。直近5年は増加に転じた
レバノンの10年変化率は-9.63%ですが、この国は上位10か国のなかで例外的な動きをしています。2020年から2025年の5年間ではプラス2.58%、つまり人口は増えているのです。647万人から585万人への減少は、10年の前半に起きたものでした。
人口の構造自体は、減少国のそれではありません。2024年の合計特殊出生率は2.23と、上位10か国で唯一2を超えています。出生率は1,000人あたり16.0人、死亡率は6.0人で、自然増は1,000人あたり9.9人。65歳以上は10.4%です。
純移動は2025年で-1万230人とマイナスですが、自然増がそれを大きく上回っています。10年という区切り方をしたためにランキングに入った国、という見方が実態に近いといえます。
2000年と比べると、人口は433万人から585万人へ35.1%増えています。10年という区切りでは減少国に見えますが、25年の目盛りでは大きく増えた国です。
15歳未満の割合は25.6%と上位10か国で最も高く、一人当たりGNIは3560ドルで最も低い。平均寿命は77.9歳です。
レバノンのピークは2015年の647万人です。上位10か国のうち8か国が1990年代にピークを迎えているなかで、レバノンとベネズエラだけがピークが最近にあります。ピークからの減少率も9.6%と、10か国で最も小さい数字です。
7位 ブルガリア:1,000人あたり7.3人の自然減
ブルガリアの人口は698万人から643万人へ、10年で7.89%減りました。
モルドバやコソボとは正反対の構図です。2025年の純移動は-2961人と、人口643万人に対してほぼ無視できる規模。一方で2024年の出生率は1,000人あたり8.3人、死亡率は15.6人で、自然減は1,000人あたり7.3人にのぼります。上位10か国のなかで、この自然減の大きさは最大です。
65歳以上の割合は22.2%、合計特殊出生率は1.72。出生率そのものは極端に低いわけではなく、死亡率の高さが人口を押し下げています。
直近5年の減少は1.79%にとどまっており、10年前半に比べれば落ち着いてきました。
2000年の817万人と比べると、25年間で21.3%の減少。直近10年の減り方より、長期の減り方のほうが大きい国です。
一人当たりGNIは1万7780ドルで、上位10か国ではクロアチアに次ぐ水準。平均寿命は75.8歳、15歳未満の割合は14.4%です。所得が比較的高いことと、流出がほとんどないことは、つながっているのかもしれません。
ブルガリアのピークは集計の始まる1990年の872万人で、そこから26.2%減りました。人数では228万人。EU加盟国のなかでは際立って大きな縮小です。
8位 セルビア:自然減と流出がほぼ同じ規模で重なる
セルビアの人口は710万人から655万人へ、10年で7.70%の減少。直近5年でも5.07%減っており、減少は続いています。
2024年の出生率は1,000人あたり9.2人、死亡率は14.9人で、自然減は1,000人あたり5.7人。2025年の純移動は-1万3086人で、人口655万人の0.20%にあたります。ブルガリアほど自然減に偏らず、モルドバほど流出に偏らない、その中間型です。
65歳以上の割合は23.1%と高く、合計特殊出生率は1.64。高齢化の進み方はクロアチアに次ぐ水準にあります。
2000年の752万人と比べると、25年間で12.9%の減少。上位10か国のなかでは長期の減り方は小さいほうで、ここ10年に減少が集中しています。
一人当たりGNIは1万3480ドル、平均寿命は76.0歳、15歳未満の割合は14.3%です。
セルビアのピークは1990年の790万人で、そこからの減少率は17.1%。上位10か国のなかでは、クロアチアと並んで長期の減り方が穏やかな部類に入ります。
9位 ベネズエラ:10年で206万人減。ただし直近5年はほぼ横ばい
ベネズエラの人口は3,057万人から2,852万人へ。減少率は6.73%ですが、減った人数は206万人と、上位10か国ではウクライナに次ぐ規模です。
レバノンと同じく、減少は10年の前半に集中しています。2020年から2025年の変化率はプラス0.26%で、直近5年はほぼ横ばいです。
人口構造は若く、2024年の合計特殊出生率は2.08。出生率は1,000人あたり15.2人、死亡率は7.7人で、自然増は1,000人あたり7.6人あります。65歳以上は10.0%と、上位10か国で最も低い数字です。
それでも人口が減ったのは流出の規模によるもので、2025年の純移動は-10万467人。実数では上位10か国で最大の流出です。
2000年の2,453万人と比べると、人口は16.3%増えています。レバノンと同じく、25年の目盛りでは増加国です。
一人当たりGNIは3860ドルで、上位10か国ではレバノンに次いで低い水準。15歳未満の割合は24.9%、平均寿命は72.7歳です。
ベネズエラのピークは2016年の3,077万人。そこからの減少率は7.3%で、10か国のなかで最も小さい数字です。減少が始まったのがごく最近であることが、ここからも分かります。
10位 クロアチア:65歳以上が23.6%。10か国で最も高い
クロアチアの人口は415万人から388万人へ、10年で6.64%減りました。
65歳以上の割合は23.6%で、上位10か国のなかで最も高い数字です。2024年の出生率は1,000人あたり8.3人、死亡率は13.2人ですから、自然減は1,000人あたり4.9人。合計特殊出生率は1.46です。
2025年の純移動は-3481人と、人口388万人に対しては小さい規模にとどまります。ブルガリアと同じく、いまの減少をつくっているのは流出より自然減のほうです。
直近5年の減少は0.97%で、上位10か国のなかでは最も緩やかになっています。
2000年の447万人と比べると、25年間で13.3%の減少です。
一人当たりGNIは2万5360ドルで、上位10か国のなかで最も高い数字。15歳未満の割合は13.7%、平均寿命は78.9歳です。流出が小さく、減少の中身が自然減に寄っているのは、この所得水準の高さと関係しているのかもしれません。
クロアチアのピークは1990年の478万人で、そこから18.9%減りました。上位10か国のなかでは、セルビアに次いで長期の減少幅が小さい国です。
まとめ
10か国を並べてみると、人口減少にはっきり2つの型があることが分かります。ブルガリア・クロアチア・ボスニア・セルビアは死亡が出生を上回る自然減が中心で、モルドバ・コソボ・アルバニア・ベネズエラは出生が死亡を上回っているのに人が出ていって減る型。ウクライナは両方が同時に起きています。「人口が減っている国」とひとくくりにすると、この違いが見えなくなります。
順位の物差しを変えると、顔ぶれも入れ替わります。減少率ではなく減った人数で並べると、1位ウクライナ680万人、2位日本377万人、3位ベネズエラ206万人、4位ポーランド155万人、5位イタリア131万人、6位ロシア113万人。さらに直近5年に絞ると、2位に中国が入ります。2020年から2025年の5年間で中国の人口は452万人減り、日本の289万人減を上回りました。
そして高齢化率で見ると、日本が世界の先頭に立ちます。2025年の65歳以上の割合は30.0%で、人口100万人以上の国では最も高い数字です。2位はイタリアの25.1%、3位はポルトガルの24.9%ですから、日本だけが5ポイント近く離れています。合計特殊出生率も1.15と、上位10か国のなかではウクライナの0.99に次いで低い水準です。
つまり日本は、人口が減るスピードで見ればまだ18位ですが、減った人数と高齢化率では世界の上位にいます。減少率の上位を占めるのは東欧・バルカン半島の国々で、そのほとんどが「若い人が国外へ出ていく」ことで人口を減らしている。日本の人口減少は、それとは違う仕組みで起きているということになります。
減少がいつ始まったかにも、はっきりした傾向があります。上位10か国のうち8か国は、人口のピークが1990年から1997年のあいだにあります。冷戦の終結と前後して人口が減り始め、それが30年以上続いてきた国々です。例外はレバノン(2015年)とベネズエラ(2016年)の2か国だけで、この2国はピークからの減少率も1割に届きません。ちなみに日本のピークは2010年の1億2807万人で、そこからの減少率は3.7%。減少の歴史という点では、東欧・バルカン半島の国々より20年ほど後から始まったことになります。
所得との関係も数字に表れています。上位10か国の一人当たりGNIは、クロアチアの2万5360ドルからレバノンの3560ドルまで幅がありますが、流出が大きい国ほど所得が低い傾向が見てとれます。純移動のマイナスが人口比で1%を超えるモルドバ(8050ドル)・コソボ(7760ドル)・アルバニア(1万2060ドル)に対し、流出がほとんどないブルガリア(1万7780ドル)とクロアチア(2万5360ドル)は所得が高い。ちなみに日本の3万8340ドルは、この10か国のどこよりも高い水準にあります。
この記事の数値は、いずれも次の統計から集計しています。国と年を切り替えれば、同じ計算を自分で確かめられます。


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