第1章:そもそも「正規分布」って何?簡単におさらい
「データが正規分布しているか確認する」——統計に関する話題ではよく聞くフレーズですが、正規分布とはそもそも何なのか、ピンとこない方も多いのではないでしょうか。ここでは、数式や難しい理論は抜きにして、直感的に理解できるようやさしく解説していきます。
正規分布とは「真ん中が多くて、両端が少ない」分布のこと
まず、正規分布のイメージをつかむためには、以下のような身近なデータを思い浮かべてみてください:
- 大学生の身長
- TOEICの点数
- サラリーマンの月収
例えば、大学生の身長を100人分集めてグラフにしたとしましょう。背が高すぎる人や低すぎる人はわずかで、大多数は「平均的」な身長に集中している——そんなグラフが描けた場合、そのデータは正規分布していると言えます。
正規分布のグラフは、山のような形になります。中心に向かってなだらかに数値が増え、両端に向かって少なくなるのが特徴です。これは「平均を中心にデータがバランスよく広がっている状態」だとイメージすればOKです。
見た目が「ベルカーブ」の形になる
正規分布のことを「ベルカーブ(Bell Curve)」とも呼びます。グラフの形が鐘(ベル)のように、真ん中が高くて、左右にゆるやかに下がっていく。まさにこうした形が、正規分布の特徴です。
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上の図は、よく見る正規分布のイメージ図です。真ん中の山が「平均値」にあたり、その左右に標準偏差ごとの範囲が区分けされています。
どうして正規分布は重要なの?
ビジネスの現場では、「データが正規分布しているか」を知ることで、さまざまな意思決定がしやすくなります。
たとえば:
- 従業員のパフォーマンス評価を公平に行いたい
- 営業成績の平均から外れた人を把握したい
- マーケティング施策の結果が“正常”なのかどうか判定したい
こういった場面では、正規分布を前提に数値を分析することが非常に有効です。Excelを使えば、グラフ化や関数による検証が可能なので、「なんとなく見る」から一歩進んで「根拠のある判断」ができるようになります。
まとめ:まずは形とイメージをつかもう
正規分布とは、「平均を中心に、データがバランスよく分布している状態」のこと。見た目はベルカーブ型で、身長やテストの点数など、日常の多くのデータがこれに近い形をしています。
次章では、実際にExcelで正規分布を確認するための準備ステップを紹介していきます。グラフを作る前に、最低限おさえておくべきポイントや設定をさくっと確認していきましょう!
第2章:Excelで正規分布を確認する3つの準備ステップ
前章で「正規分布」が何か、そのイメージがつかめたかと思います。では実際に、Excelを使ってその正規分布を確認してみましょう。
とはいえ、いきなりヒストグラムを作ったり関数を使ったりする前に、まずは準備が肝心。この章では、Excelで正規分布をチェックする際の3つの準備ステップをわかりやすく解説していきます。
ステップ1:データを整える
正規分布を確認するには、まず「分析する対象のデータ」が必要です。
たとえば、以下のようなデータを想定しましょう:
| 社員No | 月間売上(万円) |
|---|---|
| 001 | 52 |
| 002 | 47 |
| 003 | 60 |
| … | … |
このように、売上や得点など「数値データ」が1列にまとまっている状態が望ましいです。Excelにすでに入力されていれば OK。列に空白や文字が混じっていないか確認しておきましょう。
ステップ2:関数に慣れておく(最低2つ)
正規分布を扱うにあたって、最低限知っておきたい関数が以下の2つです:
- AVERAGE関数 … データの平均値を求めます
- STDEV.P関数(またはSTDEV.S) … データの標準偏差を求めます
これらは各データが「中心にどれだけ寄っているか」を判断するための基本指標となります。Excelでは以下のように使えます:
=AVERAGE(B2:B101)
=STDEV.P(B2:B101)
関数はグラフ作成時にも使いやすいので、先に覚えておくと後々ラクになります。
ステップ3:分析ツールを有効化する
Excelには「分析ツール(データ分析)」という便利な機能が用意されています。これを使うと、ヒストグラムの作成や要約統計量の出力などがワンクリックで可能になります。
分析ツールを有効化する手順:
- メニューの「ファイル」→「オプション」を開く
- 左側メニューで「アドイン」を選択
- 一番下の「管理」から「Excelアドイン」を選択し「設定」ボタンをクリック
- 「分析ツール」にチェックを入れて「OK」をクリック
すると、リボンの「データ」タブに「データ分析」というボタンが追加されます。

この機能は、これから行う「ヒストグラムの作成」や「平均・標準偏差の確認」に超便利なので、ぜひ最初に設定しておきましょう。
まとめ:3ステップで準備完了
ここまでで、Excelで正規分布を確認するための3つの準備ステップを紹介しました:
- 対象データを整える(数値だけの列にまとめる)
- 平均・標準偏差を求められる関数を知る
- 分析ツールを有効化する
これだけで、グラフを作る下地は完成です。次章では、いよいよExcelでヒストグラムを作成し、そこに正規分布のカーブを重ねるステップへと移っていきましょう!
第3章:ヒストグラムと正規分布曲線の描き方
さあ、いよいよ実践編に突入です。この章では、Excelでヒストグラムを作成する方法と、正規分布のカーブをその上に重ねる方法をステップごとに解説していきます。
前章で「分析ツール」を有効化したおかげで、ヒストグラムの作成は非常にスムーズ。ここでは、まずヒストグラムを作成し、その後、手作業でベルカーブを重ねる方法を紹介します。
ステップ①:分析ツールでヒストグラムを作成する
まずは、Excelの「データ分析」機能を使ってヒストグラムを作成します。以下の手順でOKです:
- Excel上部の「データ」タブをクリック
- 右端にある「データ分析」をクリック
- 分析ツールの一覧から「ヒストグラム」を選んで「OK」をクリック
すると、以下のような設定画面が表示されます:

- 入力範囲:前章で整えたデータ列を選択(例:B2:B101)
- ビン範囲:空欄でもOK(後でExcelが自動調整)
- 出力オプション:新しいワークシートに出力すると見やすい
- グラフ出力にチェックを入れる
「OK」をクリックすると、自動で頻度表とヒストグラム(棒グラフ)が作成されます。
ステップ②:正規分布曲線(ベルカーブ)を重ねる
ヒストグラムが完成したら、次はその上に正規分布のカーブ(理論上の理想形)を重ねてみましょう。これは以下の手順で行います:
1. 平均値と標準偏差を求める
前章で紹介した以下の関数で、それぞれ計算してください(例:B2〜B101のデータ):
=AVERAGE(B2:B101)
=STDEV.P(B2:B101)
この2つの値が、正規分布のカーブを描くための中心点と広がりになります。
2. X軸の範囲(ビンの中央値)を作成
新しい列に、ヒストグラムで使われたビン(区間)の中央値となる値を入力します。例として、40〜45、45〜50という区間なら、それぞれ「42.5」「47.5」のようになります。
3. NORM.DIST関数で「正規分布の高さ」を求める
次のような数式を使って、対応するX(ビン中央値)における正規分布の値(=Y軸の高さ)を求めます:
=NORM.DIST(セル番地, 平均値のセル番号, 標準偏差のセル番号, FALSE)
たとえば、中間値が入っているセルがD2、平均がF1、標準偏差がF2とした場合:
=NORM.DIST(D2, $F$1, $F$2, FALSE)
この数式を下にコピーすると、各X値に対するY値(密度)が出ます。
4. 散布図として追加する
得られたX(ビンの中央値)とY(NORM.DIST結果)を範囲選択し、「挿入」タブから 「散布図(平滑線)」 を選んでグラフを追加しましょう。
この散布図を、先ほど作成したヒストグラムの上に移動させ、「グラフエリア上で右クリック → グラフに追加」 などで重ね合わせると、理想的な正規分布のカーブがヒストグラム上に表示されます。
ポイント:ヒストグラムとカーブが似ていれば正規分布っぽい
このグラフを見ることで、実際のデータがどれくらい正規分布に近いかが感覚的に把握できます。
理想的には、ヒストグラム(青い棒)と正規分布曲線(なめらかな線)が同じ位置・形になっていれば、「このデータは正規分布に近い」と判断できます。逆に、大きくずれていたり、左右非対称だったりすると、偏ったデータかもしれません。
まとめ:目で見てわかる!視覚的な正規分布の確認
この章では、Excelの「データ分析」を使ってヒストグラムを作成し、そこへ正規分布のカーブを手作業で追加する方法を紹介しました。
テーブル+関数+グラフを組み合わせることで、視覚的に「このデータ、正規分布っぽいな」と直感的に理解できるのが大きなメリットです。
次の章では、さらに一歩踏み込んで、関数を使って定量的に正規分布かどうかを判断する方法を解説します。分析レベルをもうワンランクアップさせたい方は、ぜひチェックしてみてください!
第4章:関数で確認!平均・標準偏差から分布をチェック
これまでに、ヒストグラムと正規分布のカーブを使って、視覚的に正規分布を確認する方法を紹介してきました。ここからはもう一歩進んで、Excelの関数を活用して、数値的にも「正規分布に近いかどうか」を判断する方法を解説します。
「見た目ではそれっぽいけど、本当に正規分布なのかな?」と感じたとき、統計的な観点からデータの偏り具合を確かめられるのがこの方法の魅力です。
1.基本は平均と標準偏差 — おさらい
まず、正規分布の基本ルールを簡単におさらいしておきましょう。
- 平均(
AVERAGE関数) … 表の「中心となる値」です。 - 標準偏差(
STDEV.PまたはSTDEV.S関数) … データが平均からどのくらい散らばっているかを表します。
これらは、以下のように算出できます(例として、数値データがB2:B101にあると仮定):
=AVERAGE(B2:B101)
=STDEV.P(B2:B101)
この2つの数値をもとに、次の関数を使って配列全体が「正規分布っぽいか」をチェックしていきます。
2.標準得点(zスコア)を出してみよう
正規分布では、多くのデータが平均値の周辺に集まるとされています。これを数値で表すのが「zスコア(標準得点)」です。
zスコアの数値を計算するには、以下の式を使います:
=(対象データ - 平均) / 標準偏差
Excelの場合、たとえばC2セルに売上データがあり、平均値がF1セル、標準偏差がF2セルにあるなら:
=(C2 - $F$1) / $F$2
これをデータ範囲にコピーすると、各数値が「平均から何個分の標準偏差ズレているか」がわかります。
一般的に、zスコアが−3から+3の間に収まるデータが全体の99%以上であれば、ほぼ正規分布すると考えられます。
3.NORM.S.DIST関数で正規分布との比較を数値で確認
Excelには「NORM.S.DIST」関数という、標準正規分布に基づく累積確率を算出する関数があります。これを使って、各zスコアにおける確率値を求められます。
使い方は以下のとおり:
=NORM.S.DIST(対象のzスコア, TRUE)
たとえば、zスコアが計算された列がD列にある場合:
=NORM.S.DIST(D2, TRUE)
この値は「そのデータが全体のなかでどこに位置するか」を表しています(例:0.84 なら「全体のうち上位84%に入る」)。
これにより、個々のデータが正規分布に対してどれくらい標準的かを確認できます。
4.SKEW関数とKURT関数で分布のゆがみ・尖りをチェック
さらに一歩進んで、分布の「左右のゆがみ(偏り)」や「尖り度」を見ることもできます。
- SKEW関数(歪度):分布が左右にどれくらい偏っているか
- KURT関数(尖度):分布のピークがどれくらい鋭いか
使い方は非常にシンプル:
=SKEW(B2:B101)
=KURT(B2:B101)
SKEWの値が0付近なら、分布の左右が対称ということ。KURTの値が0に近ければ、理想的なベルカーブに近いです。
この2つの指標も組み合わせて見ることで、「見た目どおり正規分布か」「傾いている・尖りすぎている」などを判断できます。
まとめ:関数を使って定量的に分布を把握
この章では、Excelの関数を活用してデータの分布傾向を数値的にチェックする方法を解説しました。
- 平均・標準偏差でバランスを把握
- zスコアで各データの位置関係を確認
- NORM.S.DISTで確率値に変換
- SKEW・KURTで分布の形を数値化
これらを組み合わせることで、「何となく正規分布っぽい」ではなく、根拠をもって判断する力がついてきます。
次章では、こうして得られた知識を、実際にどのようにビジネスの現場で活かせるかを事例と共に紹介していきます。
第5章:実務でどう使う?正規分布の活用シーン3選
ここまで、「正規分布とは何か」「Excelでの確認方法」そして「関数を使った定量的なチェック」までを一通り解説してきました。この章ではいよいよ視点を変えて、実際のビジネスシーンで正規分布の考え方がどう役立つのかを紹介していきます。
日々の仕事や上司への報告、チームでの改善施策に活かせるシーンを3つに絞ってお届けしますので、「自分の場合だったらどう応用できるかな?」とイメージしながら読み進めてみてください。
シーン①:営業成績の「平均的」なレベルの把握に
営業チームの成績を評価する際、「誰が平均的?突出してるのは誰?」という問いに直面したことはありませんか?
そこで活躍するのが正規分布です。たとえば以下のような手順で活用できます:
- 月間売上データをExcelにまとめて
- 平均・標準偏差、ヒストグラム、zスコアを出す
- 「±1σ(エスグマ)」の範囲にどれだけの人が収まっているか確認
このような分析を行えば、「全体の約70%がこの値に収まってる」「この人は平均より明らかに上(または下)」といった客観的な評価材料になります。数字に根拠があるため、納得のいく評価がしやすくなります。
シーン②:給与やボーナスの分布を見直す人事評価にも
人事部門での活用も非常に実用的です。年収やボーナスの分布をグラフ化してみたとき、多くの社員が中間に集まっておらず、左右のどちらかに偏りがある場合……それは制度の見直しや課題発見のヒントになります。
例えば:
- 給与データのヒストグラムを作成
- SKEW関数で左右の偏りを数値で確認
- KURT関数で分布のとがり具合をチェック
分析結果をまとめることで、「昇給モデルが一部の人に偏っていないか?」「報酬体系に公平性があるか?」といった観点から、社内制度の見直しを検討するきっかけになります。
シーン③:マーケティング分析での「通常値 vs 異常値」判断
広告のクリック率、アプリの閲覧時間、ユーザーの購入金額など、マーケティングデータには常に波があります。こういったデータが「通常の範囲内か、それとも異常か」を見極めるために正規分布を活用する方法もおすすめです。
たとえばGoogle広告の1日のクリックデータを元に検証する場合、以下のステップを試せます:
- 日々のクリック数を集計し、zスコアを算出
- ±2σを超える日を「異常値」として着目
- その日に何が起きたかをレビュー(例:広告文が変更された、掲載順位に変化があった等)
これにより、単なる感覚的な「なんか違う?」ではなく、統計を使った根拠ある改善活動が可能になります。
まとめ:Excel×正規分布はビジネス思考を強化する武器になる
今回は、Excelで確認した正規分布の知識を現場でどう使うかにフォーカスして解説しました。
本章のまとめです:
- 営業評価では全体像と個別の立ち位置を可視化
- 人事データから不公平感や制度のゆがみに気づける
- マーケティング分析で通常 vs 異常を定量的に判断できる
こうした活用法を知っておくことで、Excelのスキルが「見せる」から「伝える」へと進化します。
あなたの次のレポートや改善提案にも、ぜひこの視点を組み入れてみてください。ちょっとした分析方法の違いが、説得力と信頼感のある働き方へつながりますよ!


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