1章:Excelでのデータクリーニングと整形:始める前に知っておくべき基本
Excelは今やビジネスの現場で欠かせないツールの一つとなっています。
データの分析や集計を行う上で、Excelはその多機能性から非常に重宝されています。しかし、Excelの機能をフルに活用するためには、データのクリーニングや整形という、下準備とも言える工程が必要となります。
ところで、データのクリーニングや整形とは何かご存知でしょうか?これらはデータ分析を行う前に、データの質を確保するための重要な工程となります。
- データクリーニング:データの欠損や異常値を検出し、修正または除去する工程です。また、データに矛盾や重複がある場合も、クリーニングにより修正します。
- データ整形:分析や処理を行いやすいように、データの形状を変える工程です。例えば、文字列を日付や数値に変換したり、テーブルの形状を変えるなどが該当します。
これらの工程が適切に行われていないと、データの分析結果に誤りが生じる可能性があります。つまり、データクリーニングと整形は、信頼性の高い分析結果を得るための必須の工程となります。
Excelでデータクリーニングと整形を行うための基本的な手法を伝える次第です。この記事があなたがExcelを使ったデータ分析を行う一助となることを願っています。
それでは次章から具体的な手法について見ていきましょう。
2章:データクリーニングのステップ1: データの重複と欠損値の確認
まず始める前に、データセットをしっかりと確認しましょう。データの重複と欠損(すなわちデータフィールドが空白または存在しない)は、エクセルを使用したデータ分析では一般的な問題です。
Excelでは「重複の削除」機能を使って重複を探すことができます。これはデータ
タブのデータツール
グループにあります。「重複の削除」ボタンをクリックすると、ダイアログボックスが表示され、重複した行を特定し、削除することができます。
次に、データの欠損値について説明します。欠損値は多くの場合、データ集計や分析に問題を引き起こします。データが欠けているということは、完全な結果を得ることが困難になる可能性があるからです。
Excelでは「条件付き書式設定」機能を用いて、セルが空白の箇所を見つけることができます。ホーム
タブのスタイル
グループにある条件付き書式設定
をクリックし、「新しいルール」を選択します。「セルの値が」を選択し、「空白である」と設定します。その後、書式を設定し、適用範囲にデータ範囲を指定します。これにより、欠損値を一目で確認することができます。
欠損値を発見したら、その取り扱いについて考える必要があります。観測不能な値を平均値や中央値、最頻値で埋める方法、あるいは欠損値を含む行を削除する方法など、適切な対策を選んで適用しましょう。ただし、どの方法を選ぶにせよ、データの特性を理解し、欠損がデータにどのような影響を与えるかを先に検討することが重要です。
この章では、エクセルにおけるデータクリーニングの第一歩である重複値と欠如値の確認の方法を紹介しました。ただし、データクリーニングはこれだけで終わりではありません。次の章では、さらに深いレベルでのデータクリーニング、すなわちデータ型の変換や正規化について説明します。
3章:データクリーニングのステップ2: データの型変換と正規化
データクリーニングの次のステップは、データの型変換と正規化です。ここでの目的は、分析しやすい形状にデータを整理することです。
型変換は、日付や数値など特定の型が必要な分析に取り組む際に特に重要となります。たとえば、日付を表すデータが文字列として記録されている場合、これを日付型に変換する必要があります。
Excelの データ
タブから テキストを列に分割
機能を使えば、データの型変換を素早く行えます。これはデータが不適切な形式で格納されている場合に特に便利です。
例: “2022/04/01” という形式の日付データがテキストとして格納されている場合、これを日付型に変換することで日付に関する関数(曜日の取得など)を適用できます。
もう一つ重要なのがデータの正規化です。これは、数値データが大きな範囲に分散している場合に、それらを一定の範囲内(多くの場合、0から1の間)にスケーリングするというプロセスです。これにより、データのスケールが分析の結果に影響を与えるのを防げます。
例: 配送時間データが秒単位で記録されている場合、これを分単位に正規化することで分析が容易になります。
正規化には、Excelの内部機能だけでは対応しきれない場合もあります。その際には、VBA(Visual Basic for Applications)というExcel内蔵のプログラミング言語を用いたり、PythonやRなどの外部プログラミング言語と連携したりすることで対応できます。
データの型変換と正規化は、データ分析の精度と効率を大幅に向上させるための重要なステップです。ぜひ使いこなして、データクリーニングのスキルを磨いてください!
次の章では、Excelのデータ整形について、効率的なデータ抽出とエラー検出の方法を具体的に解説します。こちらもお見逃しなく!
4章:Excelでのデータ整形:効率的なデータ抽出とエラー検出
これまでに、データのクリーニングを行いましたが、次のステップはデータの形を整えるデータ整形です。これは、分析しやすい形にデータを変換することで、データ操作を効率化して分析結果の解釈を容易にします。
データ整形は特に、複雑なデータや大量のデータを扱う際に重要です。Excelでは、ピボットテーブルやフィルタ、ソート機能を活用してデータを効率的に取り扱うことができます。
Pivot Table(ピボットテーブル)は、データを集計し、様々な視点から整理・分析するための強力なツールです。ピボットテーブルは挿入
タブから作成できます。複数の列にまたがる大量のデータも、幾つかの要素をドラッグ&ドロップするだけで、一瞬で理解しやすい形に整形できます。
また、ソート機能とフィルタ機能は、特定の条件に基づいてデータを選択したり並べ替えたりするための機能です。 データ
タブのソートとフィルタ
グループから使用できます。
さらに、Excelの条件付き書式設定
を用いて、エラーを含むセルや特定の条件を満たすデータをハイライトすることで、大量のデータの中からエラーや特異点を素早く発見することができます。
しかし、覚えておくべきは、どれほどのテクニックを駆使しても、データ整形の結果はどのような質問をデータから得るために行っているか、つまり、「何が分かりたいのか」という問いによって大きく左右される、ということです。そのため、何を達成したいのか?何が必要なのか?を常に念頭に置くことが重要となります。
この章では、エクセルでデータを効率的に整形する方法とエラーの発見について解説しました。次の章では、これまで学んだテクニックを活用して、より複雑なデータのクリーニングと整形を行う方法について探っていきます。
5章:データクリーニングと整形の実践:より高度なテクニックと業務応用
これまでに学んだ基本的なデータクリーニングと整形の手法を一度に組み合わせて使用し、実際のビジネスシーンで直面する可能性のあるより複雑なデータ問題に対処します。
VLOOKUP関数を活用して参照データのマッチングを行いましょう。これは、特定の値があるテーブルのどの行に一致するかを迅速に検索できるため、大量のデータを扱うときに特に役立ちます。
=VLOOKUP(lookup_value, table_array, col_index_num, [range_lookup])
関数の各引数は以下の通り:
- lookup_value:探す値。
- table_array:検索を行う範囲。
- col_index_num:戻り値となる列のインデックス数。
- range_lookup:検索方法(真偽値)。省略可能で真(1)の場合は近似一致、偽(0)の場合は完全一致を行います。
また、エラーチェックも重要なデータクリーニングの一部となります。Excelはエラー形式(#DIV/0!, #N/A, #NAME?, #NULL!, #NUM!, #REF!, #VALUE! 等)を提供していますが、特に注意すべきは#N/A
(値が見つからない)と#REF!
(セル参照が無効)です。
これらのエラーをチェックするために、IFERROR関数を利用することができます。IFERROR(value, value_if_error)
では、valueの評価がエラーの場合value_if_errorを返し、エラーでない場合はvalueをそのまま返します。
データクリーニングと整形はデータ分析の基礎ですが、これは一度きりの作業ではありません。新たなデータが追加されたり、データ構造が変わることもあります。そのため、データクリーニングと整形を定常的に行う体制を持つことが重要となります。
この記事では、Excelを使ったデータクリーニングと整形の基本的な手法からより高度なテクニックまでを学んできました。この知識が、皆さんがデータ分析における信頼性と効率性を向上させる一助となることを願っています。
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