1章:ABC分析とは?Excelで重点商品が“見える化”できる理由
「売上を伸ばせ」と言われても、全商品を同じ熱量で追いかけるのは現実的じゃありません。時間も工数も限られている20代のサラリーマンこそ、“どの商品に集中すべきか”を早く、納得感ある形で決める必要があります。そこで役立つのがABC分析です。
ABC分析は、商品(または顧客・取引先など)を貢献度の高い順に並べ、全体に占める割合(構成比)と累積割合(累積比)から、重要度でA・B・Cの3段階に分類する手法です。一般的には「上位が全体の大半をつくる」というパレートの法則(80:20)の考え方に沿っており、たとえば「売上の80%が上位20%の商品でできている」といった偏りを把握できます。
これが何に効くかというと、意思決定が一気に楽になります。具体的には次のような場面で威力を発揮します。
- 重点商品を決める:販促・提案・在庫の優先順位が明確になる
- ムダな努力を減らす:効果が出にくい商品に時間を使いすぎない
- 会議で説明しやすい:「感覚」ではなく数字で語れる
そしてABC分析は、専用ツールがなくてもExcelだけで“見える化”できるのが強みです。Excelは並べ替え、割合計算、累積計算が得意なので、手順さえ押さえれば、どの職場でもすぐ再現できます。しかも一度フォーマットを作ってしまえば、翌月以降はデータを差し替えるだけで更新でき、ルーチン業務の時短にもつながります。
重要なのは、ABC分析が「分類して終わり」ではない点です。Aランクは“守る・伸ばす”、Bは“育てる”、Cは“見直す”など、アクションにつなげるための整理術です。なんとなく「売れてそう」ではなく、数字で優先順位が決まる。これが、忙しい現場でABC分析が重宝される理由です。
次章では、分析をスムーズに進めるための事前準備(必要なデータ項目、集計のコツ、売上・粗利・数量どれで見るべきか)を整理していきます。
2章:事前準備|必要なデータ項目と集計のコツ(売上・粗利・数量のどれで見る?)
ABC分析は手順自体はシンプルですが、精度を左右するのは「元データの作り方」です。ここが雑だと、きれいにA・B・Cに分かれても「現場感と違う…」となりがち。まずは最低限そろえるべき項目と、集計でハマりやすいポイントを押さえましょう。
分析に必要なデータ項目(最小構成)
- 商品コード(またはSKU):表記ゆれ防止。商品名だけだと同一商品が分裂しやすい
- 商品名:見やすさ用(コードだけだと読めない)
- 指標(売上/粗利/数量など):ABCの判定に使う“主役”の数値
- 期間:月次・四半期など。比較可能な粒度にそろえる
可能なら次も入れておくと後で効きます。
- 単価(売上÷数量)
- 原価(粗利を見るなら必須)
- カテゴリ/ブランド/担当者(ランク別に施策へ落とし込みやすい)
集計のコツ:まず「商品×期間」の1行にまとめる
売上明細(伝票行)が大量にある場合は、ABC分析の前に商品別に合算します。Excelならピボットテーブルが最短です。
- 行:商品コード(+商品名)
- 値:売上、粗利、数量(必要なものだけ)
- フィルター:期間(対象月など)
注意点は3つ。
- 表記ゆれを潰す:「商品A」「商品A」「商品A(新)」などはコードで統一
- 返品・値引きの扱い:マイナスが混ざると順位が崩れる。原則は実績として含めつつ、別途確認列を持つ
- 期間をそろえる:新商品は発売後の日数が短く不利。月次だけでなく四半期・半年でも見て偏りを確認
売上・粗利・数量、どれで見るべき?(結論:目的で変える)
ABC分析は「何をもって重要とするか」を決める作業です。おすすめの使い分けは次の通り。
- 売上で見る:全体インパクトを掴むのに最速。会議資料にも通りやすいが、薄利多売に引っ張られる
- 粗利で見る:利益貢献が分かる“本命”。ただし原価データが不正確だと一気に崩れる
- 数量で見る:出荷・在庫・作業負荷の優先度に効く。単価が高い少量商品は過小評価されやすい
迷ったら、まず「売上ABC」と「粗利ABC」の2枚を作るのが現実的です。売上Aなのに粗利Cの“働いてる感はあるのに儲からない商品”があぶり出せます。逆に売上Cでも粗利B以上なら、値上げ・提案強化の余地があるかもしれません。
最後に:同じ切り口で定期的に見られる形にしておく
ABC分析は一発芸ではなく、継続してこそ価値が出ます。だから準備段階で「入力フォーマット(商品コード・期間・指標)」を固定し、毎月同じ手順で集計できる状態にしておくのがコツです。
次章では、この集計済みデータを使い、Excelで並べ替え→構成比→累積比→ランク付けまで一気に作る手順を解説します。
3章:ExcelでABC分析を作る手順|並べ替え→構成比→累積比→ランク付け
ここからは、2章で作った「商品別に合算された表(商品×期間で1行)」を使って、ExcelでABC分析を完成させます。流れは並べ替え→構成比→累積比→ランク付けの4ステップ。いったん型を作れば、次月は数値を差し替えるだけで更新できます。
Step1:指標の降順で並べ替える(ランキングの土台)
まず、ABC判定に使う指標(例:売上、粗利、数量)を1つ決め、その列で降順(大きい順)に並べ替えます。
- Excelの[データ]→[並べ替え]
- キー:指標の列(例:売上)
- 順序:降順
この並びが「貢献度が高い順」になるので、ここが崩れると以降の構成比・累積比も全部ズレます。並べ替え前に、指標列が数値として認識されているか(文字列になっていないか)も確認しておくと安全です。
Step2:構成比(全体に占める割合)を出す
次に、各商品の指標が全体の何%かを計算します。新しい列に構成比を作り、例えば指標がC列(C2〜C100)なら以下のイメージです。
構成比(D2) = C2 / SUM($C$2:$C$100)
ポイントは合計範囲を絶対参照($)にすること。これで下にコピーしても分母が固定され、計算が崩れません。表示形式は「パーセンテージ」にしておくと見やすいです。
Step3:累積比(上から足し上げた割合)を出す
ABC分析のキモがこの累積比です。「上位から何%までで全体の○%を作っているか」が一発で分かります。累積比の列を作り、1行目は構成比と同じ、2行目以降は“前行までの累積+当行の構成比”にします。
累積比(E2) = D2
累積比(E3) = E2 + D3
これを最終行までコピーすればOK。最終行の累積比は(丸め誤差はあっても)だいたい100%になります。
Step4:A・B・Cをランク付けする(しきい値は会社で揃える)
最後に、累積比に応じてランクを付けます。代表的なしきい値はA:上位70〜80%/B:次の15〜20%/C:残り。社内で「Aは80%まで」など運用ルールがあるなら、それに揃えるのが大事です(会議でブレない)。
例えば「A:累積80%以下、B:累積95%以下、それ以外C」の場合、IF関数で次のように書けます。
ランク(F2) =
IF(E2<=0.8,"A",IF(E2<=0.95,"B","C"))
これで、上から順にA→B→Cが割り当てられます。実務では「例外的に重要な商品」も出ますが、まずは機械的に分類してから、4章で触れる“読み解き・打ち手”に進むのが効率的です。
以上で、ExcelのABC分析は完成です。次章では、このA・B・Cをどう解釈し、ランク別に何をすべきか、そしてよくある勘違い(Aだけ見て満足してしまう等)を整理します。
4章:結果の読み解き方|A・B・Cランク別の打ち手と“よくある勘違い”
ABC分析が完成すると、つい「Aランク=重要、よし終わり」となりがちです。でも本番はここから。ランクごとに“やることを変える”ことで、はじめて現場の成果に直結します。ポイントは、A・B・Cが優劣ではなく役割分担だと捉えることです。
Aランク:守る+伸ばす(最優先で手当てする)
Aは全体の大部分をつくる主力です。まずやるべきは、売上(または粗利)を伸ばす前に落とさない仕組みを作ること。
- 欠品・機会損失の防止:在庫基準の見直し、発注頻度アップ
- 提案の型化:営業トーク、セット提案、導入事例の整備
- 値引きの監視:売上Aでも粗利が崩れていないかを定点観測
特に実務で刺さるのは、「上位商品ほど雑に扱われていた」問題の発見です。Aは伸びしろも大きい反面、ちょっとした欠品や値引きでダメージが最大化します。
Bランク:育てる(A候補を作る)
Bは“次の主力”の予備軍。ここを放置すると、Aが落ちたときに打つ手がなくなります。Bは伸ばせる理由があるかを見にいくのがコツです。
- 上位に行ける商品:露出を増やす、販促をテスト、導線改善
- 伸びない商品:Aと食い合っていないか、単価・粗利の改善余地はあるかを確認
おすすめは、Bの中でも「あと少しでA」の商品をピックアップし、重点施策を“少数に絞って”試すこと。全Bに薄く施策を撒くと、結局どれも伸びません。
Cランク:見直す(削る・変える・置いておく)
Cは「ダメ商品」ではありません。Cは単に全体への貢献が小さいというだけで、役割が違う可能性があります。
- 撤退・縮小:動かない在庫、管理コストが高い、欠品対応が地獄…なら整理対象
- 条件変更:最低発注数、リードタイム、価格改定で運用を軽くする
- 目的在庫:品揃え上必要(“ないと困る”)なら、利益より安定供給に寄せる
Cで重要なのは「テコ入れする」のではなく、手間をかけない設計にすること。20代のあなたの時間は有限なので、Cに工数を吸われない状態を作るのが勝ち筋です。
よくある勘違い:Aだけ見て満足/Cを全部切る
典型的な落とし穴は2つあります。
- Aだけ見て終わる:Aの保守は大事ですが、Bを育てないと将来の柱が立ちません
- C=不要と決めつける:利益は小さくても「ついで買い」や「品揃え価値」を持つ商品もあります
もう1つ重要なのが、ABCは“選んだ指標のランキング”だという点。売上でAでも粗利ではB/Cのことは普通にあります。結論としては、ランクを見たら次にやることはシンプルで、「Aは落とさない」「Bは少数集中で伸ばす」「Cは省力化して守るor整理」。この判断ができると、会議でも現場でもブレなくなります。
5章:運用・改善編|定期更新の仕組み化と次にやるべき分析(パレート図/条件付き書式など)
ABC分析は「作った瞬間」よりも、毎月ちゃんと更新されている状態のほうが価値があります。なぜなら、A商品は入れ替わるし、Bは育つ(または沈む)し、Cの中から突然ヒットが出ることもあるからです。ここでは、忙しい20代会社員でも回せる仕組み化と、次に打てる見える化の追加をまとめます。
定期更新を“作業”から“運用”に変えるコツ
おすすめは「入力→集計→判定」を分離すること。具体的には、
- Raw(明細):日々追加されるデータ置き場(コピペでもOK)
- Pivot(集計):商品別の合算(2章の形)
- ABC(判定):3章の構成比・累積比・ランク
の3シートにしておくと、翌月はRawに追記→ピボット更新→ABC側は自動反映で終わります。ピボットは[データ]→[すべて更新]で一括更新できるので、月初の定型作業に組み込みやすいです。
条件付き書式で“見るだけで分かる表”にする
表を開いた人が一瞬で理解できると、会議の説明コストが下がります。ランク列に対して、
- A=濃い色(例:薄赤)
- B=中間色(例:薄黄)
- C=薄い色(例:薄灰)
のように条件付き書式を設定しましょう。ルールは「セルの値が “A” なら…」でOK。さらに、累積比が80%・95%の境界あたりに太線を引くと、“どこまでがAか”が一段と見やすくなります。
パレート図で「偏り」をグラフ化する
ABC分析の説得力を上げるなら、次に作るべきはパレート図です。上位商品(棒グラフ)と累積比(折れ線)を同時に見せることで、「なぜAを最優先にするのか」を直感で伝えられます。
作り方はシンプルで、商品を降順に並べたまま、指標(棒)+累積比(折れ線)の複合グラフにします。累積比は第2軸(0〜100%)にすると崩れません。会議資料に貼るなら、Aの範囲まで背景色を薄く塗るだけで、理解速度が一気に上がります。
次にやると効く分析:売上ABC×粗利ABCの“ズレ”を見る
4章で触れた「売上Aだけど粗利が弱い」問題は、運用でこそ効いてきます。毎月、売上ABCと粗利ABCを並べて、
- 売上A×粗利C:値引き・原価・ミックスを要点検(頑張り損の可能性)
- 売上C×粗利B/A:提案や価格の当て方次第で化ける候補
を抽出すると、次の打ち手が自然に出ます。ポイントは、分析を増やしすぎないこと。まずは「更新できる」「説明できる」形に落とし込めば、ABC分析は立派な武器になります。


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